よんだ?
私は趣味で怖い話を集めています。都市伝説も好きですし、地域の特色が出ているような話も大好物です。
その日も私は、夏の日の長さを言い訳に、仕事終わりからSNSのタイムラインを物色していました。実話創作に限らず、目につく話は片っ端から読んでいたのです。
しかし大体の話は某掲示板で見飽きたような内容で、起承転結全てわかるような始末に、正直落胆していました。
そんな中、フォローした覚えのないアカウントが、気になる話を載せていました。
『まだ、どこのサイトにも投稿していない話です』
そこに私の知らない話がある。そう思うと、詳細をクリックせずにはいきませんでした。
覗いてみると、それはなんの変哲もない昔話でした。あの、桃から生まれた男の子が鬼退治をする話です。
「怖い話探すどころか、親の顔より見たことあるやつだあ」
残念な気持ちでしたが、一応スクロールしていくと、奇妙な点に気づいてしまいました。
その話は不自然な改行がいくつもあったのです。そして最後に、もっと奇妙な一文がありました。
『声に出して読んでください』
「……なにこれ?」
その下にはさらに別の昔話が続いていました。次は、干支の始まりでした。
面白そうだったのと、単純に興味のある話だったので、実際に声に出して読んでみました。
この話もやはり、中途半端な感覚で改行があったので、少々読みづらさがありました。
読み終わると、まだ下に話が続いていました。今度も知っている話です。しかし、先程の二つとは違い、怖い話でした。
ただこれも、有名なオカルト話でした。
「結局全部知ってる話じゃんかー」
そう愚痴をこぼしてスクロールしました。
『声に出して、よんでください』
また同じ文があることに気づき、私はそれを久しぶりに味わう形で声に出して読んでみました。
読み終わった次の瞬間、私の右肩が何かに勢いよく掴まれました。
私は思わず振り返ろうとしましたが、冷静になりやめました。この部屋で私は一人暮らしです。誰も背後にいるはずがないのです。
しかし目の端で、それは私の顔を覗き込もうとどんどん視界に入ろうとしてきます。
最終手段と思い、ぎゅっと目を瞑りました。
次はどう出るか、それの気配を伺いながらどうやって家を飛び出すか考えていたその時でした。
右耳のすぐ側で、それは野太い不気味な声で囁きました。
『キタヨ』
実はその後の記憶がないんです。
よく言うじゃないですか。怖い話をしていると、そういうものが寄ってくるって……。
そういう話です。
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