ソロ活ライフ

富本アキユ(元Akiyu)

第1話 サビキ釣り

高井圭介。28歳。アラサー男子。仕事は工場勤務。安月給。

自由に使える毎月の小遣いは2万円。ちなみに週休二日制である。

金なし、友なし、女なし。でも時間だけは、そこそこある。

そんな俺は、今日もソロ活ライフをエンジョイするのだった。


 今日は釣りに行く。釣りというと、釣り道具を一式揃えたり餌代がかかったり、船に乗るなら渡し船の料金だったりと、釣りは金がかかる趣味だというイメージを持っている人もいる。しかし俺がやるのは、釣りといってもサビキ釣りだ。サビキ釣りとは、通称ファミリーフィッシングとも言われる。アジ、サバ、イワシ等の魚を手軽に堤防から狙える釣りであり、渡し船に乗る必要はない。初心者でも手軽に楽しめる釣り方だ。だから小さな子供がいる家族連れのファミリー層にもサビキ釣りは、オススメの釣りだ。

 サビキ釣りの釣り道具は、安く手に入る。釣り道具屋に行くとサビキセットというのも売っていて、手っ取り早く一式を安く揃える事もできる。ちなみに俺が使っている釣り竿は、1本980円だ。一度購入して手入れしていれば数年使う事もできて結構長持ちするから、頻繁に買い替える必要もない。コスパは最高だ。釣りに行く度に毎回必要なのは餌代だ。赤アミのブロックは、1個で200円くらいで買う事ができる。赤アミというのは、小さなエビの事だ。決してミミズのような触りたくないような気持ちの悪い生餌を使う訳ではないので、あれが苦手な人にも安心だ。まあかくいう俺もゴカイやイソメを触るのは、正直苦手だからアレは買わない。

 今日は赤アミブロックを2つ買い、よく釣り人がいる堤防の釣りスポットに向かった。夏の太陽が照り付けてきてきて暑いが良い天気だ。今日は釣り日和だ。よし、早速始めるとしよう。

 サビキの仕掛けは至って単純だ。餌に似せた小さな疑似針が6つ付いた物をつける。仕掛けの下に寄せ餌となる赤アミを入れるカゴをつける。これで仕掛けの準備はできた。続いて、水の入った餌バケツに赤アミブロックを入れる。この時にハンマーのような物で冷凍されている赤アミブロックを砕いておくと丁度良くなる。竿に付けた餌カゴに赤アミを入れたら準備完了。後は、堤防の真下に糸を垂らすだけだ。


「いざ、入水」


チャポッと音がして、海の中に餌カゴが落ちていく。ある程度落ちていったら、次に竿を上下に動かす事によって餌カゴの中の赤アミが拡散し、それを狙って小魚が集まってくる。そして餌によく似たサビキの針に食いつくという事だ。竿を上下に動かした。するとすぐに小さな小魚が沢山集まってきた。そしてあっという間に竿に手ごたえがきた。


「おっ、きたきた!」


釣れたのは小アジだった。アジやサバ、イワシは群れで泳いでいる。だから一匹釣れ初めたら連続的に釣れる事が多い。釣れた小アジを針から外し、クーラーボックスに入れる。そしてまた餌カゴに餌を入れて、また糸を垂らす。するとすぐにまたアジが釣れた。


「これは良い感じだ。入れ食いじゃないか。よし、沢山釣ろう」


小アジ、小アジ、小アジ。また小アジ。今日はアジがよく釣れる。

しばらくアジを釣っていると、今度はイワシが釣れた。


「おお、イワシだ。これも美味いんだよな」


アジに混ざってイワシも食いつくようになった。針が6つ付いているので、アジとイワシが同時に釣れるという組み合わせだったり、アジが3匹ついてきたり、逆にイワシが5匹同時に連れたりする。釣っては魚を外し、釣っては魚を外しをひたすら繰り返す。


「今日は、よく釣れるな」


そして少し重い手ごたえがあった。アジやイワシの時とは違う。

少し横に流されている。


「おっ……!これは違うのが食いついたか!?」


釣れたのはサバだった。


「サバだ。サバは、塩サバにするか」


そうしているうちに、赤アミブロックを2個使い切った。


「餌もなくなったし、そろそろ帰るか」


赤アミブロック2つで、一人だと大体1~2時間くらい遊ぶ事ができる。

今日はアジ、サバ、イワシを沢山釣る事ができた。


釣りを終えて家に帰ってきた。ここからは、釣ってきた魚を処理する。

魚の処理の仕方は、大体どれも同じようなものだ。


「まずはイワシから行くか」


イワシは漢字で書くと、魚が弱いと書いて鰯だ。

文字通り、とても傷みやすい魚だ。だから早めに処理しておく必要がある。

まずは頭を落とす。そして腹を開き、内臓を取り出す。

包丁でやってもいいが、俺は数が多い時には、キッチンバサミで頭を落としてその流れで、そのままハサミで腹を裂いて内臓も取り出している。サバやアジも同様のやり方で処理していく。

小アジは、から揚げ。サバは塩焼きにして、イワシは煮つけにしよう。

ワクワクしながら調理していく。


「できた!!それでは早速……いただきます!!」


缶ビールを開ける。そしてアジのから揚げを口に運ぶ。


「美味い!!」


次はサバの塩焼き。


「うん、これもいい!!」


そしてイワシの煮つけ。


「おお、美味い!!やっぱり釣りたては違うな。酒が進む」


餌代の赤アミブロック2つで400円。それと堤防に来る途中で自販機で買った水分補給の為のジュース代150円。家に帰って飲むビール350m缶を1本200円。合計1000円以内で遊べるし、釣った魚は、おかずや酒のつまみになって食費は浮くし、かなりコスパの良い遊びだ。やっぱり一人で行くサビキ釣りは最高だ。

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