その後の裁判…

この一年の中で一番の出来事は当たり前ですが、国王が直々に傍聴するという異例の裁判です。

カシミール侯爵家乗っ取り容疑に端を発した裁判ですが、蓋を空けてみれば乗っ取りだけでなく、報告書偽造・カシミール侯爵家を語った詐欺・有名服飾店の不当な乗っ取り計画・他家への侮辱罪など様々な罪が露呈しました。


あの結婚式に参加した方々から噂が広まり、今まで不当な対応をされていても侯爵家であるため、声を上げられなかった人たちが第1種取締課までわざわざ出向き事細かに話していったのだそう。そのため、乗っ取りと詐欺に関してはあらかた固めていた内容も、他の事案とも鑑みられることになり、さらに捜索が必要となってしまったことで異例の、裁判まで6か月の期間を要しました。


裁判当日はこちらも異例で傍聴を希望する方が後をたたず、急遽裁判場所が第1裁判所から中央裁判広間へと変更となりました。お父様の横暴なやり方は知っておりましたが、クワッド夫妻やダレン様たちもかなりの反感をかっていたようで多くの厳罰を望む方が傍聴人として詰めかけたようです。


裁判は被告人がずっと罪状を否認し続けましたが、例を見ないほどの証人の数に証拠の数々で結審までの時間はたった3日でした。



侯爵家乗っ取りもあり、処刑も考えられていました。

しかし慰謝料要求が多く上がっていたことと、処刑ではなく、労働をしてその苦労を知るべきとの第1の被害者である私の意見が重く受け止められ、全員が爵位剥奪の上鉱山での労働が罰として与えられることになりました。


他国では鉱山での労働は事故や呼吸器疾患などの危険が多く、死に値するともいわれております。しかしわが国では危険が多い鉱山だからこそ健康に重きを置いております。そのため、1か月に一度の検診、病気での休養がしっかりと認められています。平民からは高い給料がもらえ、しっかりとした処置まであるとのことで人気の職業でもあるそうです。


それでも今回のように罰として従事する人たちの多くは元貴族であり、力仕事などしたことがありません。それなのに徹底した体調管理をされ、休むには医師の診断が必要の為さぼることもできない。そして、高い給料は慰謝料へ回されてしまう為、処刑の方がよかったと嘆く人が多いのです。しかし、そういう人に限って自死を選ぶ勇気はないので、慰謝料を払い終えるまでは鉱山での労働から解放されないのです。


今回は罪人の中に女性が3人おり、その対応も議論されました。労働者用の娼婦落ちという案もありましたが、私の意見を聞かれたので男性も女性も分けず、同じ労働に従事させてほしいと願いました。

今まで働いたこともないのに身分が下というだけで人を見下していた人たちです。娼婦になっても今まで程ではないにせよ着飾ります。それでは他の方々の苦労はわからないのです。それならば見下していた方々がどれだけ大変な事をされているかしっかりと経験すべきだと主張したらなるほどと、皆様その意見を尊重してくださったのです。


裁判の判決が言い渡されると力なく4人はその場に崩れ落ちていました。

しかし若さでしょうか。ミカリーナとダレン様は最後まで騒いでいらっしゃいましたわ。


特にミカリーナは私の姿を見つけると


「姉なんだから妹を庇うのが当然でしょう」や「姉なんだから私と変わりなさい」といってきます。


6か月も経つとお腹も目立ってきておりますわ。後少しで生まれるのではないでしょうか。



実はミカリーナの事だけは少し心配しておりましたの。

お腹に赤ちゃんがいると言っていたので大丈夫かと思案しておりましたが、杞憂でしたね。

これならば鉱山でもしっかりと働けそうです。


そうそう、姉だから変わりなさいとおっしゃっていましたが、私はもう何の繋がりもない他人ですのであしからず。

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