温かい家庭

「………シャロン嬢………できれば、もう一度言って?」



たったその一言でまた私の顔は熱くなってしまいます。



「………私はジョージ様が大好きなのです………こんな女でもよろしいのですか?」



ジョージ様を見つめて言葉を絞り出すと、ジョージ様が手で顔を覆ってしまわれました。

「これはやばいな…」そう小さな呟きが聞こえます。


小さく「ふぅ」と息を吐く声が聞こえ、ジョージ様の顔が見えると目が潤んでいらっしゃるように見えます。


「シャロン嬢、学生時代からあなたをお慕いしています。生涯あなたと共にいたい。

私と婚約し、結婚してくださいませんか。」


「…………はい……はい…」


その言葉に悲しくはないのに涙が溢れてきてしまいます。

そして、ジョージ様の目からも一筋涙が零れてらっしゃいます。


「あぁ……これはまずいな……嬉しすぎる……」


いつの間にか私はジョージ様の腕の中に収まっていて、頭の上からそんな呟きが聞こえます。

なんだかそんな一言に「ふふっ」と笑ってしまいます。


「シャロン嬢、笑ってる?」


「ふふっ。えぇ、幸せだなと思って笑っております。ジョージ様、これからもたくさん笑いあってくださいますか?」


私は温かく笑いあう家庭というものがよくわかりません。ミカリーナとお父様とお義母様は3人で笑ったりしておりましたが、いつも人を蔑むような笑いをしていた気がします。

私はふとしたことに笑いあえる家庭が持ちたいと望んでいました。

ジョージ様とはきっとそんな家庭を作ることをできるのではないかと期待してしまうのです。



「もちろん!いつまでも笑顔の絶えない、些細なことでも相談ができる関係でいよう。君が笑顔でいてくれるなら僕も笑顔でいられるんだ」




こうして私たちは無事に婚約し、1年の期間を経て結婚することができました。

1年の間ですっかりジョージ様は領地経営も把握され、私と分担することで今までは一人で疎かになっていたことも率先して進めていくことができ、国一番安定した領地と評されるようになりました。


そして、ジョージ様の側近でいらしたエヴァンズ様は皇室からも引き止められていたのですが、ご本人はジョージ様の近くが居心地が良いらしく、カシミール侯爵家の執事として付いて来ていただくことになりました。

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