容疑…

「第3皇子殿下、娘が大変な無礼を働いたこと、心より謝罪いたします。しかし、娘の気が昂っていたのには理由がありまして、私の顔に免じて娘をご容赦頂けませんでしょうか」


お父様がそうジョージ様に頭を下げた。あら、お父様、いつの間にか頭のてっぺんが寂しいことになってらっしゃるわ。


「ほう。では、まずはあなたの名を名乗ってもらってもよろしいですか?」


「は?名...ですか?しかし今まで何度も…「名を名乗ってもらってもいいですか?」」


ジョージ様の再度の圧に顔を歪ませながらもお父様は名乗ることにしたようですね。




「畏まりました。シャグレ・カシミールでございます」




「ほう?おかしいですね。カシミールはシャロン嬢であったと記憶していますが私の間違いですか?」



ほんとにジョージ様は人が悪い。

当主としての挨拶をすると期待して、追いつめてしまいますの。さぁ、お父様。きっと逃げられませんわよ。



「そ、それは…しかし私がそれを知ったのはつい今しがたであって「そう、それがおかしいとは思いませんか?何故当主の相続の仕方すらしらない。何をもってご自分を当主と認識されていたのか?あなたは貴族学校を卒業されていないのですか?」」



ジョージ様にそういわれてしまえば何も言い返せようがありません。貴族なら必ず卒業する貴族学校。貴族として必要な事はあたり前ですが、しっかり学習致します。そしてもちろん相続のことについてもしっかりと履修いたします。


「も、申し訳…「そこでです。どの『私の顔』に免じてこのような行いをする大層無礼な娘を許せばいいのでしょうか」」


ほら、お父様。どんどん追い詰められてしまっておりますわ。


「そ、それは…「それとあなた方夫婦、クワッド伯爵夫妻、ダレン・クワッド夫妻にはカシミール侯爵家乗っ取りの容疑がかけられています。本日その確認のために私が様子見に来ていましたが、その現場はしかと確認させてもらいました。」」


「「「「「「なっ!!乗っ取り容疑?」」」」」」


あら?気づいてらっしゃらなかったのかしら?

最初からダレン様は『ミカリーナと結婚しこの侯爵家を継ぐ』と宣言してらっしゃいましたよ?


元々相続権のないお父様が、当主として代理には権限のない貯蓄預金にまで手を出していたこと。それらを領地の危機でもないのに散財していたこと。領地経営の仕事は私が行っていたのに、それらを自分の名前に書き換え国には報告していたこと。


これらすべてが罪になることご存知なかったのでしょうか。


当主だとしても貯蓄預金には基本的には手を出しません。緊急に備えているからこその蓄えです。それを以前諫めた際には「金のことには口を出すな!」の一言でしたわ。


それからはどのくらい何に使われているかはしっかりと確認しながらも、領地でなにが起こってもいいようにお祖父様に念の為と言われた私名義の資金を元手に自分で店を構えながら、投資を行い、しっかりと貯蓄ができていたので放っておきました。


いつかお別れするときにはしっかりと回収する為に明細はもちろんお父様個人の名義として借用に書き換えて。

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