捨てられるとは…

「それからあなたはダレン様に私が捨てられたと言うけれど、私捨てられたと思ったことは一度もありませんのよ?」


頬に手を当て、首を傾げてみながら訳がわからないわという意思を表してみる。


「だって捨てられたと思うと言うことは少なからず私がダレン様に気持ちがあるか、婚約内容に旨みがあった場合のことでしょう?

ダレン様との婚約にはいずれもなかったのよ?


尊敬もできなければ仕事もできない。贈り物ひとつする配慮さえできない。それなのにお金は湯水のように使い、伯爵家にも援助しなければならない。そして自尊心だけは高く、女は黙って従え?挙げ句の果てには義理とは言え妹に手を出して妊娠?こんな方に従っていては家はお取り潰しまっしぐら。

婚約破棄万々歳ですわ」


あらいやだ。

私としたことがこんなにも心の内をぶちまけてしまい恥ずかしいですわ。

でも最後と思えばこのくらい許されますわよね。


なんて心の中で反省と気持ちのよさを感じているとやっと意識が浮上したのかダレン様が愉悦の笑みを浮かべていらっしゃいます。





「そうか、やはり君は、そんなに私を失うのが恐いんだね。だからそんな意地悪を言ってしまうんだね。そんなにも私のことを愛してくれているのならばミカリーナには可哀想だが離縁の手続きをして君と結婚することにするよ。そして不憫なミカリーナは離れに住まわせてあげることにしよう」


「なんてこと」「お子はどうされるおつもりなのかしら」ご婦人方の不快そうな声が耳に入りますが、ダレン様の不思議な言葉に、私は思わず笑ってしまいました。



「あら。うふふ。やはりダレン様って面白いお方。」



「そうだろう!そうか、そんなに私の事を愛してくれていたとも気づかずにすまないことをしたと思っている。ここからまたあらたに始めようではないか」



そう堂々と私に向かって宣言してくる。

隣には唖然とした顔でダレン様を見つめるミカリーナがいるのに。


「前々からダレン様に一度お話しなければと思っていたことがあったのですが………

今日はお祝いの席なので、やはり控えさせていただきますね。」



「そんな私たちの仲だろう。そんな遠慮などせずに話してくれ」



私の言葉を聞いてダレン様がまるで自分は優しいから受け入れるよと言わんばかりの様子で話してくれと勧めてくるので、今回はお言葉に甘えてみることにしましたの。

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