その6. 大富豪

 高校生の三年間、クラスで大富豪が流行っていました。流行っていた、というよりは没収されないトランプで休み時間を有効活用していたといった方がいいでしょう。ババ抜きやポーカーもいいですが、高校生にとって前者はもはや面白みがなく、後者は組み合わせを覚えることが大変でした。なのでやはり大富豪が流行っていました。


 地域によってルールが異なりますががありますが、僕のクラスでは以下の通りでした。


・配られた手札に3があればすぐに場に出す。そして、場に出した枚数が多い人からのスタート。


・一番強い数字は2。


・8切り。場に出された時、強制的にターンが一巡し、その人からのスタートとなる。


・11バック。場に出す順番が逆になる。


・同じスートが二回連続で続いた場合、以後そのターンは同じスートのみしか場に出せない(「縛り」と呼ばれていました)。


・さらに数字が連続した場合は「超縛り」となり、階段上にしか数字を出すことができない。


・同じ数字を四枚出せば、革命。数字の強さが逆転する。革命返しが起こったら、再び数字の強さは戻る。


・能力を持ったカードで上がった場合は問答無用で大貧民への転落。


 以上です。


 クラス全体で徹底されており、不思議なことにルールの追加・削除はなぜか定着しませんでした。


 とはいえ、配られたカードをどのタイミングで使うのかと戦略を練るのは楽しく、駆け引きの日々でした。大富豪は多感な高校生でも易しすぎず難しすぎず、それこそ僕のような厨二病でも平等に楽しめるゲームの一つだと思います。


 僕の所属したクラスは四階にあり、三年間の移動もありませんでした。なので下の階から仲の良い友達が昼休みに訪れ、大富豪をして帰っていくのが日常でした。


 たまに顔見知りくらいの、大富豪でしか知り合わないような人たちも上がってきました。その度に言われたことなんですが、「俺らのルールに超縛りなんてない」と口を揃えて言われました。どうやら同じ学校の、同じ学年でもローカルルールは発生しうるようです。

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