朱夏に向かう日々の置き場
高坂 吉永
その1. 昔書いた何かが出てきた。
砂塵が巻き上がる。まるでこの心のように大地は枯れてるらしく、広野で見かける緑といえば、少しばかりの水を蓄えたサボテンくらいだ。
無情にも、空は相変わらず青い。
陰を作ってくれそうな雲はどこにも見当たらない。
最悪の土地、悪魔の地。
俺の故郷は相変わらず。
家までの果てしなく遠い道を走っても、顔色一つ変えない故郷は憎らしくも愛おしい。
道は一つだ。走りきるだけでいい。
太陽が傾くよりも早く飛ばしているんだ。日没までにはきっと着く。
風の音に紛れて、悪魔が叫ぶ。俺を捉えようと地の底から追っかけてきている。
俺は悪くない。悪事なんて一つもやっちゃいない。
ただ、善のために引き金を引いただけ。
悪魔、金に塗れたあいつをそうやって神の御許に送ってやった。今頃は聖なる御足で踏み潰されてるだろう。ざまぁみろ。
だが、奴らから逃れるのは別の問題だ。
俺は善のために戦う。神だってそうあるべしと仰った。
だが悪から逃れる道は用意してくれないのが、あの方の常だ。
これまで何度も逃れてきた。
今回は無理なのだろうか。息が切れようとしている。弾丸の残ったまま銃を握る。
善のために戦うならば、あの御方は見放さないだろうから。
『砂塵の悪魔』
覚えていないくらいの昔に書いていた、小説とも詩とも呼べないものです。ただなんとなく公開したいなと思ったので、掲載しました。
たぶん洋楽のフォークに影響を受けて書いたものだったと思います。
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