第76話 おあいこ

 普通の学校生活が始まりました。

 秋ということもあり、昼間から涼しい風が教室内に吹き込んでいる。

 私はふと、窓際の席に視線を向けた。


「……Zzz……」


 寝てる。ただ姿勢を崩さずに寝ているので、先生には気付かれていない。

 それでも本人は抗っているのだろう、時々カクンッと首が折れ再び持ち上がる。


 何この可愛い生き物!


 永久保存していい?!私の遠山くん秘密フォルダに追加していい?!

 めっちゃ可愛いんですけど!

 ……しかし今は授業中、スマホを出して写真なんぞ撮っていたらバレてしまう。


「Zzz……」


 いや、怒られるの覚悟でシャッターを押す?ダメよ、没収された時にスマホで何を撮ったか聞かれるしバレるじゃない。

 そうだ!写真がダメなら絵にすればいいんだ!


「ふふ……」


 私って天才!

 私は授業などなんのその、白紙の紙を取り出すとシャーペンを走らせた────

 そして、授業終了のチャイムが鳴る。


「……あ、寝ちゃった」


 チャイムで目が覚めた遠山くんは急いで板書をノートに写す。

 私はそんな彼に向けて、


「ノート見せましょうか?」

「いいの?ありがとう沖矢さん!」


 私は彼にノートを渡した。


 これでおあいこですね。

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