第31話 テスト

 修学旅行が終わり、普通の日常が戻ってきたそんなある日。


「テストまで残り一週間!やるぞやるぞやるぞー!」


 放課後、教室に残った僕と犬塚くんは、クラスメイトの席を勝手に拝借し、向かい合わせに繋げる。


「……というわけで、ご指導ご鞭撻の程、よろしくお願いします!」

「任せてよ!」


 ちなみに、僕が教える側で犬塚くんは教わる側だ。

 というのも、僕は総合成績学年五位のクラストップ。逆に、犬塚くんは総合成績学年一〇六位。

 というわけで、今回は僕が犬塚くんに勉強を教えるテスト対策会だ。

 勉強はつつがなく進む。


「なあ、ここはどうするんだ?」

「ここは、これをこっちに持ってきて代入するんだよ」

「なるほどな」


 人に教えることで自分の理解も深められるなんて素晴らしいじゃないか。

 すると、


「ねぇねぇ遠山、私にも教えてくれない?」


 同じクラスで、修学旅行で班行動を共にした柏木さんが僕に話しかけてきた。

 増える分には構わないし、僕としては大歓迎だけど。

 僕はそんなことを思いながら視線を柏木さんの奥へ向ける。


「いいけど……沖矢さんは?」

「なになに〜、千聖が気になるの?」

「なっ?!」


 柏木さんなんてことを言うんだ!聞こえるかもしれないじゃないか!


「そ、そうじゃなくて!沖矢さんには教わらないの?」

「あーいいのいいの。千聖は勉強できるのに教えるの下手くそだから」

「そうなんだ……」


 ケラケラ笑いながらそういう柏木さん。

 奥にいる沖矢さんはそれを聞いて頬をふくらませている。可愛い。


「それじゃあよろしく!」

「う、うん」


 僕は若干押される形で柏木さんの参加を承認した。

 すると、僕は後ろから肩をつんつんと軽く叩かれた。振り向くと沖矢さんが気まづそうに立っていて、


「ひ、一人で教えるより二人で教えた方がそれぞれの解説を聞けて一石二鳥ですよね?……わ、私、教えるの下手なので遠山くんの見様見真似で教えようと思うんですが、入ってもいいですか?」


 なんだ、そういうことか……沖矢さん可愛すぎます。


「うん、もちろん!」


 僕は当然そう答えた。

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