宇宙店主
準決勝のシャッフルチームバトルが終わった。勝ったのは偶数チームである。
メンバーは、
そして、その三名に加え、もう一名が決勝に勝ち上がる。それは誰なのか。敗者チームの中でも最も健闘したものが勝ち残ることになっていた。
食べた量でいえば、
だが、運営委員長である
「これは、巳螺野龍哉だろう。あの技は決勝でも華々しい活躍を見せてくれるはずだ」
運営委員の多くは亘理に金銭を与えられたり、弱みを握られており、異を唱えるものはいない。巳螺野の決勝進出が決まりつつあった。
「ノンノンノン! それはナンセンスですよ」
異を唱えるものがいる。それは見知らぬ男であった。
禿げ上がった頭を長く伸ばした髪で無理やり隠そうとする特徴的な髪形、いわゆるバーコードヘアの男。しかし、不思議とショボくれた印象はなかった。鷲鼻に尖った耳、堀の深い顔立ちという異相が奇怪なイメージを与えるせいで、それ以外の印象が消し飛んでいるのだ。ライトグリーンのつなぎを着ており、どこかの作業員のようにも見えた。
ここは関係者以外立ち入り禁止の厳重な密室である。どうやって、この場に現れたというのか。
「ニャハハハハ、その、巳螺野さん、ですか? もうネタが割れちゃってるじゃないですか。催眠術、使うんでしょ。知ってます、バレてます。ダメダメダメ、同じネタの使いまわしなんて、ネタ切れを疑われちゃいますよ」
そう言って、大声で笑い転げる。亘理や委員たちはその様子を見て呆然とするばかりだ。
だが、すぐに亘理は正気を取り戻す。こんな男はすぐに摘み出さなくてはならない。スマホを取り出すと、警備会社を呼び出そうとする。
ツーツーツー
しかし、電波が遮断されており、まるで反応がない。
馬鹿な、無線通信は完備しているはずだ。亘理はそう思うが、反応がないものはどうしようもない。
直接、警備を呼ぶべく席を立とうとする。
――立てない!
まるで、金縛りというべき状況だった。亘理の足に力が入らない。立ち上がることはできなかった。
それは、ほかの連中も同じようで、皆、一様に怯えた表情をしている。
「あぁー、驚いちゃいました? ニャハ―、そんなつもりはなかったんですけどねぇ。
でも、安心してください。決勝進出の四番目の選手に、
そう言って、鵜田と思しき男が腹を抱えて笑う。
おかしなことに、その笑い声を聞いているうちに、鵜田の言うとおりにしたくなってきた。亘理は決勝進出の四番目に鵜田の名前を書いていた。ほかの委員たちも同じことをしている。
「うんうん、あなたたち、大変良い行いをしましたよ。子々孫々にこのことを誇ってください。本物の宇宙人の地球進出を助けたんですから」
その言葉を残して、鵜田はいつの間にか消えていた。
亘理は自分の身体に自由が戻ったことを確認すると、ぼそりと呟く。
「これ、催眠術だろ。キャラ被ってんじゃねぇか……」
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