飛び出ない朝

バブみ道日丿宮組

お題:とびだせ朝 制限時間:15分

飛び出ない朝

 朝起きると、

「……?」

 違和感があった。

 特に股間にいつもの元気を感じられなかった。

 朝立ちが基本な人は、性を日頃から出してないっていうし、たまには別にいいんじゃないか?

「……はぁ」

 まぁそういう日もあるよねと、身体を起こす。

 するとどうだろうか。

 あるものがなくて、あるものがある気配がした。

「……?」

 下をうつむくと、胸の谷間ができてた。

「なにこれ?」

 思わず揉んでみると、むにゅと柔らかい感触が返ってくる。

 胸筋鍛えてたっけ? それともなにか、別の性別になってるとか?

「ないない」

 そうは思いつつも布団をはねのけ、ズボンを下ろし、トランクスを掴んだ。

「……ごくり」

 体が強ばる。

 見てはいけないものを見てしまうようなそんな錯覚が全身を支配した。

 それでも、見ないわけにはいかない。

 バッという音が出る勢いでトランクスを下ろせば、

「……ない」

 朝立ちをすべき股間がそもそもついてなかった。

「は……はは」

 これは夢だろうか、そう夢に違いない。

 確かに女の子に憧れて、女装をしたりしてはいるが、完全に女の子になりたいと思ったことは……少しだけあるけど、ないようなもの。 

 憧れは憧れで、男という性別を楽しんでたはずだった。

 だというのに……。

「……痛ひ」

 ほっぺたをつねってみれば、痛みが返ってくる。

 あれか、これは、いわゆる異世界転生ってやつか?

 そう思い、周囲を見渡してみても、馴染みがある光景が広がってるばかりで、おかしいところは何もない。

 現実か。認めたくはない

「……」

 学校どうしよう。男子生徒用の制服はもちろんあるし、それを着てくのが僕の日常であるはずである。

 でも、このもりもりした胸は隠せない。きつく締めればいけるかもしれないが、バレるのも時間の問題だ。

 いっそのこと、一日体調不良として休んでしまうか。

 そんなことを考えてると、

「ーーお姉ちゃん起きた?」

 信じられない言葉を聞いた。

「なんだ、起きてるじゃん。朝ごはんできてるから早く降りてきてよね」

 妹は僕をみて驚かなかった。むしろ、当たり前のように起こしにきた。

「……はぁ?」

 病気でないことがばれてしまったから、起きるしかない。

 胸をどうやって隠そうかと考えながら、ハンガーラックに向かうと、

「えっ……?」

 そこには男子生徒用の制服ではなく、女子生徒用の制服があった。

 僕は女の子だったのかと、悩みながら制服を着ると、全く違和感がなかった。どうして?

 着てしまった……どうしようか。大人しく登校すべきなのか。

「ーーお姉ちゃん早く!」

 妹が呼ぶ声に逆らうことができず、僕はそのままご飯を食べて登校した。

 そこでは誰も不思議に思わなかった。

 僕が女の子だという認識が広まってた。


 そうして、僕の苦悩な日々が始まるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

飛び出ない朝 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る