マイ・リトルフレンド
ノカ
ずっと友達
小さい頃はよく夢を見た。
宇宙の夢だ。
いや、宇宙人の夢だ。
紫色で、背の低い、触覚の生えた、ぼくの友達。足はあるけど手はなくて、その代わりに触覚の先の丸いところでぼくをつつく。
最初はそのひとつしかない大きな目が怖かったけど、ぼくを見てきらきら輝くそれを眺めているうち、だんだん怖くなくなった。
何度か宇宙に連れて行ってもらった。彼は背中にロケットを2つ背負っていて、ぼくは彼に掴まって宙まで行った。
宇宙は真っ暗でちょっと怖かった。でも宇宙にいるときの彼の目はいっそうきらきらしていたのだった。きらきらの目でぼくを見つめながら、彼はぼくにはわからない言葉で話しかけてくる。わからないけれど、ぼくは毎回微笑んでうなずいて見せたものだった。そうすると彼は嬉しそうににっこりとする。それが嬉しかった。
突然現実に引き戻される。冷たい。机に伏せっていた頭を起こすと、髪から水が滴り落ちた。
「ぎゃはははは!全然気づかねえでやんの、ダッセー!」
うちのクラスのいわゆるいじめっ子である3人組が僕の机の横に立っている。どうやらこいつらが、昼休みにも関わらず一人教室の隅で寝ようとしていた僕に水をかけたらしい。
───くだらない。
高校生にもなってこんなことをして楽しいのか。楽しいのだろうな。わからないが。
特に怒りのような感情も湧かないまま3人をぼうっと見ていたのだが、それが奴らの
「・・・・・・オイ、なんか言えよ。おもしろくねーだろうが」
「せっかくイジメてやってるのに、やりがいがないですねェ」
「人聞きが悪いな~イジメじゃねえだろ?これは『キョーイク』なんだよ」
「ちげえねえ!ぎゃははははは・・・・・・」
と、汚い笑い声が響く。
――─制服の替えは持ってきていなかった。体操服で帰ろうか。
「だーかーらー、無視してんじゃねえ、よっ!」
胸ぐらを掴まれ、無理矢理立ち上がらされる。あぁ、殴られるんだな・・・・・・と、
その時。周りが真っ赤な光に包まれた。ぼくの胸ぐらを掴んでいたやつも、光に包まれて見えなくなった。眩しくて一瞬、目を閉じた。次に目を開けたとき、周りには何もなかった。本当に、何も。
人はいないし建物もない。漫画なんかで見るような、
もしかして夢なのだろうか。それともさっきまでのが、夢?
頭を悩ませていると、後ろから聞き覚えのある声がした。ぼくにはわからない言葉だ。
振り向くと、「彼」が立っていた。嬉しそうに触覚を揺らして、にっこりとしながら。
マイ・リトルフレンド ノカ @NoKamarshu
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