22話 想い
22。想い
本当は土曜に買い物に付き合うはずだったが、お互い寝不足で、そのまま彼女の家で寝てしまった。
起きたらもう午後の14時を回っていたので帰ろうとしたが、彼女がどうせ帰っても1人で夕食を食べるだけなら、一緒に夕食を食べましょうと言われ、彼女の手料理と、この家の居心地の良さに惹かれ、お言葉に甘え2人で夕食の食材を買いにスーパーに出かけた。
2人でスーパーで買い物をしていると、まだ浮気される前、彩と一緒によく買い物に行った頃の事を思い出した。
ただ、彩の事を思い出しても以前ほど気にならない自分がいる。
晩御飯の食材を買うだけなのに、2人でする買い物がとても楽しい。
比べるのは良くないと思いつつ、思えば彩と買い物に行く時はいつのまにか彩が喜ぶ事に気をとられ、自分自身が楽しむ事を忘れていたのかも知れない。
裕子との買い物の方が自然としっくりして心地良い。
裕子のマンションに戻り、裕子がキッチンで料理を作っている。
克己はソファーに座り、何故か落ち着くな~と思っているうちにウトウト寝てしまっていた。
「高谷さん、晩御飯ですよ」裕子に起こされた克己は、ほんの30分程度だったが、彩と離婚してからこんなに気持良い目覚めは初めてだった。
裕子の作った料理はとてもおいしかった。
離婚してから久しぶりの家庭料理だったから、いやそれ以上においしく感じる。
結局、夕食後も居心地が良くてそのままだらだらと居座り、お風呂にお呼ばれしたのでお風呂に入らせてもらった。
その後彼女がお風呂からあがってきた姿は、
・・・・きれいだ・・・。
透き通るような肌がうっすらピンク色に染まって、大人の色気を漂わせ思わず見とれてしまう。
「高谷さん そんなにじろじろ見ないでください、恥ずかしいです」
「ごめん」
髪を乾かし終わった彼女の隣に座り、彼女にキスをする。
彼女は抵抗する事なく、受け入れてくれ、そのまま2人でソファーに横たわる。
「やさしくしてください。私あまり経験ないんです」
俺は頷いて、彼女を抱き上げベッドに行った。
(小説ようにかっこよく抱けなくて、かなりヨタヨタしてしまったが、彼女は何も言わなかった)
彼女は本当に経験が少なかった、初めてイったと言っていた。
2人ベッドの中で抱き合いながら昔の話から最近までいろいろな話をした。
その話の中に俺が彩と婚約した頃の話になり。
「あの、あまりこういう話はしたくなかったんですが、当時、彩さんは近藤さんとお付き合いしていたんですよ。良くデートしたり旅行に行ってたりしていたんですが、別れたという話も聞いていないのに、突然 彩さんが高谷さんと婚約した。って聞いて、女子社員は皆驚いていたんです。
でも高谷さんも彩さんも幸せそうだったので、皆その事に触れなかったんです。
あまり聞きたくなかった話ですみません」
そうか、やっぱり、2人が付き合ってるって噂は聞いていた、あの時彩にも確認したが付き合っていないと言われ、それを信じた。
「いや、そんな事だろうと思ってた。でももう気にしていないよ。それより、俺に女を見る目がなかったという事だよ。」
「そんな事はないですよ、少なくとも最初の6年間は2人幸せだったんですよね、それは紛れもない事実なんですから、それを否定しちゃあダメです。すばらしい思い出ですよ」
「そうだね、ありがとう」また裕子に慰めてもらった。
彼女は俺の全てを受け入れてくれたとても大きな心の持ち主、そして
とても綺麗、でもどこか 寂しげで 弱さがあり、守りたい と強く思った。
日曜の夜、自分のマンションに帰ってからも、彼女の事が頭から離れず、やっぱりあのマンションは何故か落ち着く。
また彼女のところに、あのマンションに行きたい。
明日、職場で見る裕子はどんな姿だっけ?今まで彼女の美しさに気が付かなかった俺は、職場の彼女が、土日の彼女を同じなのか、ちょっと不安と期待があり、そんな事を思って眠りについた。
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