7話 離婚3

 7.離婚3


 しばらく沈黙のままでいた。

 そうこうしているうちに、弁護士がやってきた。


「こんにちは」


「わざわざ、ここまで来ていただきありがとうございます。今日はよろしくお願いいたします」


「いえ、こちらこそ よろしくお願いいたします。」そう挨拶し、彩に向って


「こちらが、弁護士の山本正義先生」


「こんにちは」と彩が言ったが、彩はようやく事の重大さに気が付いたようで、だんだん顔が青ざめて、わなわなと震えだし、下を向いて、静かに泣きそうな顔をしていた。


 それからしばらくたって、2人がやってきた。


 旦那の方は日焼けているので顔色はわからなかったが、ぱっと見はイケメン風だがいろいろとチャライ、30にもなってなんだあの軽さ という印象を持った。


 ばつの悪そうな顔をしており、奥さんには何も言ってないのだろう、知り合いの家族の家に遊びに来た。という感じで 突然明日会社休んで一緒に出掛けようと言ってきたとか何とかで愚痴を言っていたが、弁護士の先生を紹介すると、何か変だなと感じたようで、それからしんみりとした顔つきに変わった。


 俺が主導で話をして、なにかあったら先生にお願いする形で 話を始めた。


「杉田昇さん、あなたは私の妻と浮気しましたよね」


「えっ?浮気なんかしてませんよ」


「じゃあ、浮気ではなく本気ということですか?」


 むかついたの返してやった。


「いえ、彼女は私と高校時代の同級生で、今テニススクールで、私がコーチをしている関係です」


「昨日、電話でお話ししましたよね」


「すみません、急な電話だったので、私も機が動転してしまい、あんな話になりましたが

 単なるテニススクールのコーチと生徒の関係ですよ。」


「往生際が悪いですよ、これを見ていただけますか」そう言って写真を見せた。


「これはなんですか? まだしらを切るつもりですか」


 横の奥さんが驚いた顔をして


「あなた これは何?私が妊娠してたいへんな時にこんな事してたの?!!」


「すみません」やっと認めたが こうなったら もう何も言えない。


「えっ?妊娠?どういう事?」彩がびっくり、驚いていた。


 ここで弁護士先生が説明を始めた。


「高谷さんはこの浮気につきまして、杉田さんと高谷彩さんにそれぞれ慰謝料300万円を請求いたします」


「その他の条件ですが、一般的にはこういう場合杉田さんと高谷彩さんが今後会う事を禁止するのですが、今回高谷克己さんからは、離婚後は2人自由に会っても良いとのことです。


 財産分与につきましては不貞を働いた妻にはなし、という提案です。


 ご了解いただけますでしょうか。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る