第11章、お釈迦様の使い
浩太、浩太、大丈夫か。
かかしは心配になって浩太に話しかけたが、当然浩太にはその声は届かなかった。
「大丈夫じゃ、浩太は気絶しているだけじゃ」
どこからともなく、声がしてきた。
かかしは、一瞬空耳かと思った。
「空耳ではないぞ。
私はお釈迦様の使いじゃ。」
「お釈迦様の使い?」
「そうじゃ、浩太は自分で命を断とうとしたので私が妖術を使って一時的に眠らしたのじゃ。
実は浩太がこうなるのはある程度分かっていたので浩太の見守り役としてお前さんに魂を入れて見守らせる事にしたのじゃよ。
しかしここまでの事になるとは想定外じゃった。
浩太にはとても可哀そうな事になってしまったわい。
しかし、もうすぐここに、ある女性が通りかかるわい。
その女性が浩太を見つけ救急車をよんでくれて無事病院まで送り届けてくれるわい。
そんなに心配しなくてもだいじょうぶじゃ」
その言葉を聞いて安心したかかしは、
「良かった」
かかしは安心したせいか、なぜか体中の力が抜ける、そんな感覚をおぼえた。
しかしお使いの方は、
「本題はここからじゃ、このままでは浩太は意識を取り戻しても完全に生きる気力を失っておる。
そしてまた自殺をするかもしれぬ。
何があってもおかしくはない。
そこでじゃ、お前の魂を浩太の体の中に入れてやる。
それで何とか、今後の浩太の人生をどうか救ってやってほしい。
いっしょに、困難を克服してやってほしい。
頼めるか?」
かかしは浩太を助けてあげるチャンスだと思い、
「解りました。
浩太を助けてあげる事が出来るなら何でもいたしましょう」
するとお使いの方は、
「では、お願いする事にしよう。
でも、その前に伝えておかなくてはならない事がある。
いくらお前さんの魂が浩太の体の中に入ったといえ、体は浩太のものだ。
お前さんの思う通りに動きはしない。
それに慣れさせるために、体を動かせない、かかしの中にお前さんの魂をいれたのじゃよ。
当然、目に見えるものは実際、浩太が目で見ている物だけだ。
お前さんに出来ることは、浩太が見ている物を見る事と、心の中で浩太と話しが出来るぐらいのもんじゃ、
それから無事浩太が立派に成長した後は、またお前さんにやってもらいたい事があるので、一時的にまたかかしに戻る事となるがよいか?」
「はい、お使いの方一時的でも浩太と話しが出来るようになるのですね。
承知致しました」
(良かった、浩太と話せる様になるぞ、これで助けてあげる事が出来るぞ)
かかしはそう思うと嬉しくてたまらなくなった。
「では、頼んだぞ」
ほどなくして、お釈迦様の使いの予言通り一人の女性が通りかかり、救急車が到着した。
かかしがそれを見届けると、また、あの柔らかい優しい風が何処からともなくピューと吹いてきて、かかしの意識も遠のいていったのだった。
次回、第12章、浩太とかかし
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