平凡な大学生の平凡な日常

鯨ヶ岬勇士

○○大学の私

 大学とは高度な専門的学術の研究および教授を主たる機能とする高等教育機関であり、様々な学問分野で学位を授与する権限を持つ――よくもまあぬけぬけと嘘が言えたものだ。


 今の大学、特に私が通う大学にはそのような高度な専門的学術もへったくれもない。学問の成果よりも、資本主義に煽られてコンビニエンスストアのレジ横で低俗なバラエティ番組のような広告を垂れ流していることで有名なほどだ。


 それでも大学曰く、スポーツの分野ではファンも多く、スポーツにおいては高度で、専門的らしい。特にあるスポーツにおいてはサポーターを公言する有名人もいるらしいが、当の学生からすればそれは真っ赤な嘘だ。あのスポーツ――ここではその競技に真摯に向き合う他の選手に配慮し、名前は伏せさせていただく――の部活動のあだ名を学外の人間はしらないのだ。


 通称部、最低のあだ名だ。しかし、「火のない所に煙は立たぬ」という言葉があるように、根拠のない悪評というわけではない。事実、この部活動は数年前に女子マネージャーに対する集団による性的暴行事件があった。大男たちに囲まれ、暴行を受けた女子学生は相当な恐怖を感じただろうし、自分がその立場だったらと思うと――いや、考えたくもない。


 それほどまでの大事件を起こしたにもかかわらず、当の部員たちは「将来のため」や「スポーツに青春を捧げる有望な学生だったから」などと理由をつけて不起訴かつ示談で終わった。彼らがそれを経て反省したかどうかは、その部室に行けば一瞬でわかる。甘く、生臭い葉っぱの匂いと紫煙で濁った視界が広がるそこは、スポーツマンシップなどこの世に存在しないことを教えてくれる。


 ここまで長々と語ってきたが、私が彼らを批判できるような学生なのかどうかは正直なところ、わからない。大した目標もなく、現在の自分の偏差値で入れるからという理由でこの大学に進学し、楽単と呼ばれる講義ばかりを選んでいる時点で、あの虚ろな目をした部員どもと大差はないのかもしれない。


 これはそのようば私という1人の青年の人生とそこですれ違い、私の去っていった人との物語である。

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