神の導きを与えるために身をひさぐ少年と、とある男を探して旅をする男の物語。
大人な雰囲気のハイファンタジーです。
性的で大変素晴らしい……いや、はっきり性的興奮を煽るような露骨な官能表現はないものの、扱われている題材そのものはしっかり大人向けなお話です。
特に序盤の導入部、しっとりとした雰囲気に満ち満ちているところが素敵でした。
魅力はやはりキャラクター、その人物造形やそれぞれの背景です。
蠱惑的な〝聖娼〟の少年と、謎多き異邦人の男、そして執着に狂ったもうひとりの男。彼らがそれぞれ抱えた生き方と、その絡みあった末の行く末が、綿密かつ丁寧な筆致で描かれています。
特徴的なのが視点保持者の存在、特に後半の形式です。
物語のおおよそ本筋と言えるであろう部分が、すべて「少年の夢」という形式で描かれていること。直接に介在できない結果ただ見るだけという、この独特の描かれ方が印象的な作品でした。