私が先に出会えてたら、何か変わっていたのかな

みお

第1話 

 私が先に出会えてたら、何か変わっていたのかな。


こんなこと、思ったことはないだろうか。



今日は、ある女性の話である。







 今井 碧海(あおい)は、27歳でOL。


東京都内のオフィスで、ある企業のインターネットサイトのデザインをしている。


朝9時に出社。


18時まで仕事をして、帰宅。


それが碧海のルーティーンだった。



碧海は、友達をあまり作らない。


会社では、みんなから可愛がられているが、碧海自身が友達と思っている人は1人もいない。



あ、ごめんなさい。嘘言いました。1人はいた。


2個上の男。30歳。


加賀 海沙陽(あさひ)。


この男が、碧海のたった1人の友達だった。


碧海と海沙陽は、仕事仲間で5年の付き合い。


一緒に仕事をし、フォローし合い、助け合いしている。


会社の中でも仲良しコンビとして、公認の中になっている。


でも、付き合ってはいない。


海沙陽には、奥さんがいる。


碧海と出会う前から結婚していたのだった。



海沙陽:「仕事終わったー。今からでる」


碧海:「了解。おつかれさま」


このラインのやり取りを平日は毎日している。


そして、碧海の家に海沙陽が仕事帰りに寄るのだった。


「うぃーっす」


「おつかれー」


「うちさー、今日大変だったんやけど。


担当しているデザインの企業から急な変更きてさ!


しかも、起案の締め切り過ぎてるのに!


ありえなくない!?


そのせいで、上司とかに掛け合ったり、超特急でデザイン変えなきゃいけなかったりでめちゃ疲れたわ」


「うわー。それはおつかれさま。


よく頑張ったな。碧海」


そう言って、2人とも立ったまま碧海を抱きしめて頭をよしよしと撫でる。


碧海は、筋肉のついた海沙陽の胸に顔をうずくませている。


「いいにおいする。碧海の髪」


「海沙陽は、ほんとにおいフェチだよね」


碧海は、海沙陽の顔を見上げている。


二重のぱっちりした目を大きくあげて海沙陽をじっとみる。


「もぅ。かわいいなぁ」


海沙陽はそう言って、もう一回抱きしめる。


「碧海のにおい好き」


「えー。ありがと」


「今日さ、碧海が疲れてるかなぁと思ったね、これ買ってきた!」


海沙陽は、長方形の箱を出し、碧海に渡す。


碧海は、長方形の箱に封をしているシールをゆっくり剥がし、箱を開ける。


「え! シュークリームやん!!


しかも、これ並ばないと買えないやつやん!


もぅー! 海沙陽大好き!」


「食べよ一緒に」


「うん」


2人はソファに移動し、シュークリームを食べた。


シュークリームの皮はサクサクで、中は美味しいカスタードクリーム。


「めちゃ美味しい〜」


「それは良かった。碧海、良く頑張りましたっ!」


そう言って海沙陽は、碧海の頭を優しく撫でる。




「じゃ、そろそろ行くわ」


「うん。また明日。シュークリームありがと」



そして、海沙陽は、自分の家へ帰っていった。




帰った後、碧海はいつも考える。


海沙陽が彼氏だったらなって。


こんなに話が合って、趣味が合って、気が合う相手いなかった。



優しくて、なんでも受け入れてくれて。


落ち込んでいる時は慰めてくれて。


仕事の要領めちゃ良くて、できる男で、相性良くて。


こんなフィーリングが合う男、というか人間は他にいないって思っている。




1個だけ海沙陽の嫌いなところがある。


それは、奥さんがいるということ。



奥さんがいるのに、私の家に毎日くるとかなんなの?って思うけど、いざ来てくれると嬉しいし甘えちゃうんだよね。


そして、会ってる時は怒りとか不安とか一瞬で消えて、海沙陽に癒されるんよね。




海沙陽は、うちのことどう思っているんだろうか。


奥さんのこと大事だからなんとも思ってないんだよね。きっと。


ただ、うちが1人だから心配で来てくれてるだけ。



海沙陽も、碧海も、どちらも名前に海がついている。


海がついているからというわけでもないが、2人とも魚が好きで、水族館に行ったり釣りしたりも大好きだ。


もちろん、魚を食べることもね!



そういう名前の共通点にも奇跡を感じちゃうけれど、それはうちだけの思い過ごしだ。








でも、もし、



私が奥さんより先に出会えてたら、何か変わっていたのかな。




夕日の真っ直ぐな光がブラインドの隙間から差し込んできて、碧海の顔をオレンジに照らす。



まるで、1人、海が見える崖に座り、夕日を見ているような光景が浮かび上がる。


その横顔は、どこか寂しげで泣き出しそうな、触ったら崩れてしまいそうな儚さを物語っていた。












筆者の戯言


人生、生きていればいろんな出会いがあるよね。結婚したい!と思える人がいてもその人が結婚してたらできない。


両思いだったとしても付き合えないこともある。


結局、恋愛ってタイミングですよね。


なーんて、思う今日この頃でした。


戯言に付き合っていただき、ありがとうございました!

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私が先に出会えてたら、何か変わっていたのかな みお @mioyukawada

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