VS
夏眼第十三号機
喫茶店、トワル。
朝日、私は目覚めて下に降りる。
ここは私の管理する雑居ビル。その一階に、現在公開可能な私の仕事場があるのだ。
「おはようございます。朝桐さん」
下に降りた直後、好青年とは言い難い男が朝の挨拶をしてきた。
彼は赤城大河。
まぁ、なんというか、このビルの用心棒をしてもらっている。
色々あって、彼は人間じゃない。
だからか、どうも威圧感があるようで一部の常連からは不評だ。
……もちろん、私の様に彼のファンもいるがね。
「おはよう大河。調子はいいかい?」
「別段、困ったことは無いですよ。……アイツも、まぁ元気そうだし」
アイツ、というのはきっとベルちゃんの事だろう。
ベル・インタースティール
地上に現界した、もしくは墜ちた天使である。
現在は、まぁ色々あってその力の殆どを失い、ただの少女と化している。
その力は、大きな力は一体どこにいったか?
それは、大河の所にさ。
さっきも言っただろう?大河は人間じゃないって。
喰らったのさ、どうしようもなくね。
そうして人間をやめたわけさ。
詳しくはまた語るよ。
……いや、別に人間の可能性に絶望したとか、成長に限界を感じたとか、そういう訳じゃない。
アレは、たぶん。事故だと思う。
不幸な事故。
起こるべきじゃなかった事故。
要因はたった一つ。
彼らが『出遭ってしまった』ことかな。
……まぁそういう意味では、私も同義な訳だけど。
この街は、暴力と情欲が渦巻いている。
だからか、結構金回りはいい。もちろん出所を選ばなければの話だが。
そんな街で、私はちょっとばかしデカい情報屋を営んでいる。
ここ『トワル』は私の隠れ蓑兼、趣味程度かな。
チリリンとドアのベルがなる。
きっとモーニングなお客さんだろう。
この街にはびこる暴力は、夜闇にうごめく。
そのせいか、やってきた客はどこかこの街に似合わない、普通の人間に見えた。
……まぁ、人は見た目によらないけど。
ドアを開けたお客様に向かって、私はこう言ったのであった。
「いらっしゃいませ。喫茶店、トワルへようこそ」
これは、この街————B地区および、蛇皿市で巻き起こる、常識外の物語たちである。
楽しんでいただけると、幸いだ。
(暗転)
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