亮さんのアコギ

 私達はそれから、仕事が休みの度ぼっちのお見舞いに行った。

亮さんと私はシフト希望も合わせていた。シフト作るの亮さんだけど。


 今日は久々に職場の食事会だ。

「あぁめんどくさいな」

「そんなこと言わないで下さい。大事な仲間ですよ」

「そうだな」


「あれ田中、何その荷物?」

大きな黒いものを背負った田中


「アコギっすよ。」

「へーあんたがギター弾くの?似合わないけどな。ははは」

崎山さんがつっこんだ。


「失礼ですね。これは浅井さんのです」

亮さんの?!

「弦切れまくりで僕の兄貴に張り替えしてもらったんすよ。ね?弦買うって言うからついでに、兄貴がやってくれるって。」


「田中、ありがたいけど今日持ってくんなよ」


「今帰りで、一旦寮帰る時間なかったんすもん」


「はぁ.....」

恥ずかしそうな亮さん。


「今度のレク浅井くん、なんか弾いてよ!」

崎山さんが言います。いつもの勢いで。

「フッ」

小さく鼻で笑う亮さんでした。


私も目を輝かせて亮さんに言いました。

「聞かせてくださいね。王子様」


 私達はまだ病み上がりとされ、二人寂しくジュースや烏龍茶を飲んだ。

「亮さん、もうソフトドリンク一周しましたよ。おなかパンパンです」

「そうだな。帰るか」


私達は一足先にギター持って帰ることにした。

私はそのギターが気になって仕方がない。


「あれ弾くか」

「え」

帰り道の小さなベンチに腰掛け、亮さんがギターを出す。私はじっと隣で見守った。


♪〜

またどこかで 泣いてませんか

君の知らない 僕はここにいる

弱虫になった僕 消えてしまいそうな

君をみつけたから この時代に

またひとりで泣いてませんか

僕の知ってる君 大好きな君

泣き虫の君 怖がりの君


まさかの歌付きで。私はみとれて聴き入っていた。現代でまた聴けるなんて。

「ありがとう。亮さん。幸せ〜」

「真由見すぎ。さすがに俺でも恥ずかしいわ。」

「歌詞、亮さん作詞作曲したんですよね?」

「うん。不思議だな」


「亮さん、あのコンテストで急に止まった時、覚えてますか?」

そう。亮さんはあの後から少し様子が違った。

昭和40年代で私を抱きしめたり、ずっと好きだったとか。言い出したのだった。私の質問に、停止する亮さん。あれ?覚えてないのかな。


「......あの時、走馬灯みたいに現代の記憶が少し戻ったんだ。真由が、いつもの仕事中とか事件で負傷した時の真由と。それから事故の記憶がぼんやりと。」

その結果、あぁなった?!亮さん.....


 私はもういつの時代のどのタイミングの亮さんが、ほんとの亮さんの気持ちなのか分からないけど。

今目の前にいる亮さんを、ずっと見ていたいと思った。


あれ以来亮さんが近くなったけど、私はもっと近づきたい......。

でもなんて言ったらいいの?どうしたらいいんだろう......。

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