そこに眠るのは

 母から面会許可が出たと連絡があったので

私は事故の相手、車の運転手のお見舞いに行くことにした。意識は回復してない中でも睡眠バランスと排尿、少しの反射反応があり水分を飲み込める半覚醒状態だそう。

回復の見込みはありそうと聞いた。


亮さんも行くと言うので、私達はタクシーでその病院へ。


事情を説明し、受付に病棟の担当が来た。事故の相手だから慎重なのだろうか。

病室まで案内される。

空いていた扉から眠る姿がちらっと見えた。

私は.......私は言葉を失った。



―――――そこに眠るのは、ぼっちだった。


ナースが後ろに待機してる。本人は眠っているようで、ぼっちー!とも叫べない。

他人の空似かもしれない。私はふとベッド上の名札を見た。

村上 恵介

ぼっちだ。ほぼ100%ぼっちだ。

私のただの夢じゃなかったんだ......。


担当のナースが

「大丈夫ですか?」

という声に私は「あっはい。」と言って亮さんをみた。

もしかして亮さんも.....ぼっちを分かってる?亮さんがじっとぼっちを見ている。



後ろのナースに、亮さんが詳しく状態を聞いている。ナースだと分かった途端専門用語が飛び交い私にはついていけない。

私はぼっちの手を握りたいが、さすがに変なのでじっとぼっちを見つめていた。

ぼっちは、亮さんや私を分かるのだろうか。早く目覚めてほしい。

絶対に、無事に回復してほしい。


病室を出て、亮さんが小さな声でつぶやいた

「ぼっちが.........まさかな」


「.....亮さんっ分かるんですか?ぼっちって今.......言いましたよね......」


「真由のことも、マーガレットも.....。こんなことあるんだな.....」


「ぼっちも私達が分かりますかね」


「きっと分かる。ナースの話なら後2ヶ月以内に意識が戻れば大丈夫らしい。ぼっち、今頃あの時代で俺達を探してんじゃないかな。」


「向こうで、私が先に居なくなったんですか?」


「あぁみんなで、ずっと探したよ。あの暴走族に連れてかれたんじゃないかって。もう俺は生きた心地がしなかった。真由が居なくて」


今頃ぼっちは、亮さんまで居なくなって、どうしてるだろう。

亮さんはあの時代では、現代の記憶は無かったんだよね。私だけ両方の記憶があった。


「そういえば亮さんプレイボーイだったって」


「そうなのか?誰がそんな話.....あ、思い出したら真由の知らない男とのチークダンス面白かったなぁ。」


亮さん....あれだけ色んなことあったのに何故チークダンス....。


「今度は真由とチークダンス踊りたいな」


「一切照れずにそんなこと言うなんて、やっぱりプレイボーイの素質ありですよーっ。」


「しばらく通おうな。ぼっちんとこ」


「はい」


タクシーを拾い、乗った。

寮に着く頃亮さんが大きな声をあげる。

「あっ!!!!!」

―――っびっくりした.....ほんとにびっくりしたぁぁ


とりあえずはタクシーを降りた私達。


「びっくりするじゃないですかっ」


「真由、この間言ってた王子様.....」


え それのあっだったの.....

そうだ。私、バカみたいに王子様に出会いました〜って...言ったんだった。

恥ずかしい....もしかして最後のあれも思い出した?


「はい.....亮さんです。.....王子様」


「悪い気しないな。王子様か」


はぁ.....私はこの人を調子に乗らせましたか。

まぁほんとに素敵ですけど。


亮さんは記憶を少しずつ思い出すかのような素振りだった。


「真由のヒッピーも可愛かったぞ。荒れ地の王女みたいなボサボサ頭」

荒れ地?ボサボサ?.....

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