酔っ払いにからまれる
私はけして歌手志望ではない。村上さんにある提案を持ちかけた。
「私ピアノとかオルガンなら弾けます。歌じゃなくてほら、村上さんがギターで亮さん歌うとか。どうですか?」
「あっ僕ギター弾けない。ピアノ弾けるよ」
そこですか....そんなビー玉みたいなキラキラな目で言わないで.....。
「そうだね。ピアノで参加しようか。真由ちゃん素晴らしいアイデアありがとう。」
「いや、あの.....」
「僕は亮の夢を叶えたいんだ。作詞作曲家になってほしい。僕はさ、親の会社に結局は属したお固い人生だから。亮には羽ばたいてほしい。僕あんな歌下手なのに へへっ。だから歌い手探してたんだよ」
下手.....自覚しながら凄い。そう言われると断れないのが私。
結局コンテストとやらに向けて練習が始まる。
「それから、ぼっちって呼んでよ」
「ぼっち?」
「僕は村上
「けいすけさんがどうしてぼっち?」
「さぁ。亮がつけたんだ。子供の頃に」
二人は幼馴染?そんなはずは無いと思うがこちらの世界ではそうらしい。
私達は、営業時間終了後店をかりて練習することに。
さゆりさんは気持ちよく応援してくれる。
ぼっちが、さゆりさんに場所代を支払うと言ったらしい。さゆりさんは断ったが、「要らなければ真由ちゃんの足しにしてあげて。ほらお化粧品とか」と言われたそう。
―――練習初日
「本番ていつですか?」
「2週間後日曜日」
「2週間?!」てっきり何ヶ月後とかだと思った。
「急がば回れ。まずは本番じゃなく他の曲〜なにか歌ってみて僕ら合わせるからね。はいっ」
えー。流行り.....分からない。70年代.....。
じっと待っている二人
一か八か、私は翼をく○ださいを歌い出す。
「今〜わたしの〜願い」
豪華なピアノ伴奏とアコースティックギターでクラシカルかつ繊細な音に興奮した。
よかったぁ。ぼっちはピアノがかなり上級者のよう。
「真由ちゃん、やっぱりいいね。いい声。」
「いえ。そんな照れますよ。」
「ぼっち何みとれてんだよ」
「真由ちゃん可愛いし。おっきな目にライオンの赤ちゃんみたいな鼻がさ」
ライオンの赤ちゃん?初めて言われましたけど。
ぼっちはお喋りが止まらない。
「あっ遅くなっちゃったね。帰ろ亮」
二人を見送り、ふとテーブルにぽつんと残る鍵を見つけた。『
私は鍵を持って出た。
商店街の裏路地は呑み屋さん。ガヤガヤにぎやかだ。
平成より元気だな〜なんてキョロキョロしながら歩く。
「ねぇちゃん ひとりでなにしてるのー?」
あ...絡まれた酔っ払いに。
「薬屋の御用です」江戸時代かっていう意味不明な回答をする私。
「可愛いね。ちょっと飲もうよ。」
ぐいぐい人の手を引っ張る二人組。ちょっと質が悪そうな男達だ。私は考える。
一瞬で振り解いて靴脱いでダッシュ?
大きな声出す系でいく?どちらも成功率30%あたりか。失敗したら、どっか連れて行かれそうな雰囲気。しかも紳士的にではなく.....。
「なに考えてる?怖い?あーもしかして怖くなった?」
「ひゃひゃひゃひゃっ」
頭がおかしいのかってくらいの奇声で笑いひとりが私を肩に抱えた.....足をバタバタして。
「ちょっと、降ろしてください!」
「何見てんだよ てめぇ」
「別に」
後ろ向きでも分かる。今の『別に』は亮さんに違いない。
「離せ。降ろせ。触るな。」
私は降ろされた.....また刺激に弱い私は涙ぐむ。亮さんがヤラれたらどうしようと心配と不安で。
「う゛ぇ―――――ッ! いやだ――――じぇったいケンカとか暴力ダメ――ッ」
気づけば鼻水垂らして泣きながら叫ぶ私。
ボケーッと亮さんが私を見てる。人が集まりだし、絡んできた男達は居なくなった。
私、撃退した?
亮さんは何も言わず私の手を握って早歩きでその場を離れた。相当恥ずかしかったのだろう。商店街のベンチに座った。
「すいません。これ忘れ物」
「出歩くなよ 夜」
優しく私の肩にふれた。優しい声.....平成と別人?いや同じはず。
「ヒッヒッッック う゛」あー、しゃっくりみたいなあれ、ちょっと泣きすぎたか叫びすぎたか.....出てしまった。
「え.........」ちょっと引いてる亮さん。
もしかしたら、二人生きてもとに戻れなかったら?そんな事が頭をよぎり結局また泣いてしまう私。
「ごめん こわかったな」
亮さんは私の背中をさすった。介護されてるみたい.....。
いえ。別の怖さです。
あの男達より亮さんを失うのが怖い。
亮さんと離れるのが怖いのです。
マーガレットに私を送り届けてから亮さんは帰った。
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