顔が.....違う
病院に着き、ばあちゃんの病室へ
508 辻 八千代 さま
「ばあちゃん!」
「しー。寝てる」
ばあちゃんは眠っていた。意識は戻ったもののよく眠ると。穏やかな寝顔のばあちゃんをしばらく見ながら、夏代さんやおひささんの話をしたくなる。でも、できる訳ない。
ばあちゃんに昔の話を聞きたいが、今はただ元気になってくれますように。
結局ばあちゃんは起きないので、一旦母と外へ食事に出た。
「ばあちゃん、87歳か。」
「そうだね。もうそんな年かぁ。早いね。」
「お母さんは、ばあちゃんの戦時中の話聞いたことある?」
「急にどうしたの?」
「いや。戦争を知る人がどんどん亡くなっていく時代だからさ。聞きたいなって」
「ふぅん。ばあちゃんは兵庫でも、田舎だから大して空襲にはあってないってね。」
「そうだ!じいちゃんと結婚したのいつ?」
「えーと、いつかな。たしか....」
前のめりで聞く私
「23歳くらいかな。結納の日に初めて会ったって」
「え?」
「昔は多かったんだって。早く年頃の者たちを結婚させて産めや増やせの時代。親同士が決めて当人達は決まってから知らされる。」
「へぇ.....」
「お母さん、梅野さんって知ってる?親戚にいる?」
「さぁ、聞いたことないわ」
ばあちゃんは、その日起きなかったのでまた出直すことにした。
実家に泊まり昔からのアルバムを見ることにした。
ばあちゃんとは私が小学生の頃から同居していた。きっとばあちゃんの写真もあるはず。
どれもこれも、私のアルバムばっかり....赤の和風な分厚いアルバムたち。その端っこに立てられた薄い焦げ茶色の冊子が目にとまった。棚から引き出すとパラパラと写真が落ちた。
ん?白黒写真。全く整理されていない無造作に重ねられてツッコまれていた写真は、母の小さい頃の写真だ。
焦げ茶色の冊子を開いてみる
これは家族写真。ばあちゃんの川端家
戦前とみられるセピアに色褪せた写真の中に懐かしい顔が並ぶ。
一昨日?まで一緒に過ごした人達が時が止まったかのような写真の中で真面目な顔をしている。いつの写真か分からない着物姿の女性や荷車を引くひいじいちゃんの写真。
と、最後のページにあった....
どう見ても、正一さん出征の日に撮られた写真。
軍服を着た男性...顔が違う。
夏代姉さんの隣に立つのは、ばあちゃんだ......。
古ぼけた写真を持ちリビングへ。
「ねぇこの人、この軍服の人は?」
「さぁ 誰かな。ばあちゃんの兄弟はだれも戦争行ってないはずだけど。ばあちゃんに聞いたら知ってるかもね。」
正一さんは一体誰なんだろうか。
私は戦死者記録を探ることにした。
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