5
その晩、僕と彼女は、何年振りかで肌を重ねた。
「ね、史孝」
二人並んだベッドの上。僕の胸に顔を寄せて、彼女が言う。
「なに?」
「あたしたち、お互いに背中合わせにまっすぐ、遠くへ遠くへと進んできたけどさ、地球が丸いから、結局反対側で出会ってしまったんだよね」
「そういうことだな」
「でもさ、もしも地球を離れて、本当にまっすぐロケットで背中合わせに飛んでいったら、出会うこともなかったんだろうね」
「いや、そうとも限らないよ」
「……え?」
彼女が顔を上げて、まじまじと俺の顔を見つめる。
「最近 Nature Astronomy に載った論文によれば、プランク衛星が観測したCMB(Cosmic Microwave Background:宇宙背景マイクロ波)のスペクトルデータから、宇宙の曲率が99%の確率で
「え、そうなの? ってことは……」
「そう。この話が本当なら、この宇宙も閉じたリーマン空間ってことになる。だから……例えロケットで背中合わせにまっすぐ飛んでいったとしても、僕たちはいずれ出会うことになるだろうね。何百……何千……何万億年先になるか分からんし、当然二人とも生きてはいないと思うけど」
「そっか。いずれにせよ、あたしたちはまた出会う運命、ってわけね」
そう言って、彼女は右腕を僕の胸に巻き付けた。
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