第5話 小舟

こっちへおいでと

引き寄せられて

その胸の中抱きしめられた瞬間に

長い夜の航海は始まる

重ねる唇も

絡めた指と指も

寄り添う身体も

すべて委ねよう

わたしはあなたという海を

漂う小さな小舟


穏やかな波に小さな呼吸

嵐のような波に喘ぐ声

小舟は揺れる寄せては返す波のそのままに

のまれて乱れて沈んでいきそうになる

その度

強き腕に引き寄せられて

また新しい波の中を漂いゆらゆら揺れる

そうしてそれは

いつしか海と混じりあい

小舟は紅き花と咲く


愛でてください

抱いてください

あなたに咲いた一輪の艶花を






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