ナツヤスミ

平 遊

10年

今年もまた、夏が巡ってきた。

セミの声が鳴り響く中、焼けるような日差しに照らされながら、今年もまた僕はあの約束を思い出す。


『10年経ったら一緒に見に来ようね。』


(10年、経ったね。)

記憶の中の君は、色褪せる事無く輝いたまま。

眩しすぎる真夏の太陽のように、いつでも僕の中にいる。

なにひとつ、変わることなく。

(一緒には見られないけれど、でも僕、独りでも見に行くよ。)

一緒に埋めた、お互いへの手紙。

(君が僕にどんな手紙を書いてくれたのか、今日、僕は見に行くよ。)

10年後の今日。

僕は、あの場所へと向かう。

10年振りに。

たった、独りで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る