第17話 暁子

「暁子さん」

「扉開けて」

「冗談、何で朝っぱらから折角の休みに

あんたの顔見なきゃなんないのよ」

「遊園地いこ。ばっちり支度済み」

「はぁ、あんた馬鹿?なんであんたと遊園地よ」

「萌香さんから理由聞いたから

私じゃどうしてあげることもできない理由

でも私がどうにかしなきゃいけないこと」


「ほっといてよ。傷をほじくって楽しいわけ」

「メスを入れなきゃなおらない傷もあるわよ

それとも怖い私が?同じ結界師ですものね

はじかれたままひとりぼっちのが怖い?

わたしがデビュー前はそれなりに参加してた

そこまで調べ上げたわよ」

「同じ結界師二人はいらないわよ」

「何故同じ結界を張って喧嘩する事はないわ

同調することはあってもね

違う結界なら同時にはれる

結界維持しながら治癒をかけるのがどんなに難しいか

わかんないでしょう?」

「わかるわよ。私も治癒能力もってるんだから」

「ならひっこんでる理由はないはずよ」


「だから仕事にでて来いってわけ

命がけの仕事よ?出る出ないは自由意志だわ」

「うん。自由意志だから強制はできない」

「でも暁子さんは私より早くから命かけてきた

私が結界を張るのをやめてでもでてくるならそうする」

「だからあんたは馬鹿だって言うのよ

そんなことされて出てきました手落ちがあれば私のせい?」

「だれもそんなことおもわないわよ」

「だから甘ちゃんだっていうの

思うのよ素直でのびのびしているあんたが遠慮するだけで

ひとはわたしのせいにするのよ」


「絶対にそんなことないさせない」

「思い込みで綺麗ごと言っているあんたに何がわかるのよ」

「思い込みで逃げ事言っている暁子さんは何から逃げてるのよ」

「逃げてない」

「逃げてるあからさまに私を避けてるじゃない」

「あんたみると吐き気がするのよ。

みんなによいこよいこされてて。」

「暁子さんだって活動すればねぎらいはもらえるわよ

私がデビュー前はそれなりにやってたんでしょう?」


「そうよ子供だったから耐えられた

大人になって人の顔色でいろいろわかるようになった

そんな私に今更こだわらないで隠居生活させてよ」

「はやすぎる!なにより苦しすぎるおびえてるだけでしょ」

「自分はもう用が無いと決め付けて悲しんでるだけでしょう」

「悲しんでなんかない」

「私は悲しい!」ぽろっと涙がおちた嗚咽をもらして座り込んだ

「何泣いてるのよ。みっともないから入りなさい」


扉が開いた相手の首にまきつく

「ちょっと離れなさいよ泣いてるだけでもうっとうしいのに」

「私の両親は能力者だった。私のアパートには妖怪がいた」

「なにも不思議に思わずそだった。でも外の人間は違ったわ

まず信じない。次にうとまれる。力なんか見せたら気味悪がれた」

「そして2度とよってこない」「でも私には父がいた」

「なにより全く変らず人として動いてる妖怪たちがいた。」

「力を使っちゃいけない時、力を必要とするときひとつひとつよ」

「一歩一歩進んで行った」


「でも暁子さんはその頃まゆに包まれて人を拒んでいたのよね。

それが余計に人をこわがらさせた。それが理解できるのに

時間がかかったよね。人として普通に生活できる頃には

心はささくれたってた。ちがう?」

「どうしてそんなことわかるのよ?」

「私がそうだったからよ。怖いと思えば結界で逃げてた。」

「その度に父は呼び出され私を殴って叱ったわ」

「力を使わなくなったのは小学入る頃、

同時に力が使えることも忘れて行ったわ」


「暁子さんにはその存在がなかった

守ってくれる人がいないから力を失うこともなかった。」

そこまで言って首根っこを離した涙も止まってた

「だれから聞いたの?」

「だれにも私がそうだった」

「貴方の幸運は両親が能力者だったこともよ」

「両親からも怖がられてた?」

「ある晩、車に乗ってがけっぷちをダイブしたわ」

「死んでない私の頭を車に何度打ち付けられたか…」

「一家心中を試みた両親を責めることもできずに

両親は死んでいった。私が無傷で発見されたのは奇跡だと」

「自己治癒能力が私を生かしただけ」

またほろりと涙がでてきた。なんてすざましい人生だろう

「なに泣いてるのよ。人の傷そこまでほじったら気がすむでしょ」

「帰りなさいよ」


「遊園地いかなきゃ」半べそでいう

「あんたこの場におよんでまだ言うの。

人がどれだけ傷ついたか。わかりもしないのでしょう。」

「仕事なのお化け屋敷のくちさけ女が本物だと

うわさが出回っている。本物かは私がわかるけど

その対処方については私は一本槍だから…」

「ふん、少しは自分のことわかってるのね。

ネットワークへの誘いもかけてなおかつ

生活手段の援助ができるか話あえばいいわけね」

「でいいと思います」

「支度してくるわ。勧誘はM地区配置でいいわね」

「移動型お化け屋敷ではないのでM地区でいいと思います」

「人があんたを嫌わない理由がよくわかったわ」

「しつこいから?」

「違う。自分じゃ見えてないのでしょう対面して会ってからいまも

治癒能力が流れてくる。さらさらと砂みたいなのが

私の体に吸収されていく。ささくれた鰓が元に戻るように」

「へー力なんてなにも使ってないのに」

「使わなくっても放出されるのよ。自然と力はね」

「萌香さんの体温がいつも高いのといっしょかな」


そして私たちは遊園地に向かった

「私じゃなくても文子や摩子あたり

連れてくれば良かったんじゃ?」

「こんな時間に起きてくれないよ」

「旦那は?」

「相手が女の人なのにつれてける?」

「かえでは若すぎるか美鈴さんは」

「美鈴さんに押されて暁子さんのところへ来た」


それからは単純だった。妖怪の確認。妖怪でした。ばっちり口割け

そして休み時間を潰してもらい説明

妖怪ネットワークの存在と意義

人数把握の為にも所属してほしいこと

退治以来はいくばかのお金もでること

別に参加しなくても問題ないこと

そもそもくちさけ女の能力ってあるのだろうか?

と思うのは内密にしてと

もっぱら話は暁子さんまかせ

OLセールスウーマンなのだ

アパートの管理人で社会に出たことのない私とじゃ格が違う

私は仕事が終るまで待ち無事にM地区管理塔印刷所まで

連れて行ってごあいさつ

生活で困っていることはないようなので

ネットワークの登録だけして帰っていただきました

ちなみに普段はちゃんと人間の格好に口紅でくちさけを書くらしい

忙しかったりすると本物の姿で仕事してたらしくって

それでうわさがたったらしい

できるだけ人と暮らすなら極良く人の姿でというほうこうで話した

でも鏡みて笑ったよ全然ちがうんだもん

本物に勝るもの無しってか


ちなみに暁子さんはそれからぽつぽつと復帰しだしました

相変わらずいいたい放題けなしてくれますが

そこは10歳でデビューしてる大先輩。黙って聞いています

ちなみに年も1歳違いで年上でした

いろいろあるだろうけど、もめたって仲間解決できるよね

てか管理塔主としてまとめてみせます

そんなわけで暁子さんと一歩?近づけた美穂でした



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