第16話 サークルに入りたいの宣言②
「あぁ、入ってるぞ。4つな」
「4つも? 内訳は?」
「バレー・バスケサークル、フットサルサークル、ボランティアサークル、バスケサークル」
なんか同じようなの2つ入ってるけど、わざと?
しかもボランティアサークルって……ホイミは絶対に興味なさそうなのに。
「
「そりゃ、大学生活楽しむためだろ」
「でも、そんなに入ってて大丈夫なの? そんなに時間作れないし、疲れるでしょ」
サークルの活動日はそのサークルごとによって様々だ。
平日の放課後にやるようなとこもあれば、土、日にやるようなところもある。
4つも入ってたら暇な時間無さそうだし、体力も持ってかれそう。
「ははぁん? 分かってねぇな、ナギ。サークルの使い道を。何も俺はガチでボランティアや球技をしたいわけじゃないぜ?」
「というと?」
「言わば、これは無料で出来る出会い系と同じだよ。しかもそんじょそこらの出会い系とは違う、出会うのは同世代、それにいきなり会うからプロフィール写真の顔面詐欺にも引っかからない」
なるほど。ホイミの狙いはそれか。
つまるところ、サークルを人と出会うための場としてだけ使ってると。
活動自体はどうでもいいからまずは人と会う機会を増やすためにサークルに入っているということか。
サークルの活動を純粋に楽しんでやってるトクダネとは大違いだな。
まさか卑猥な気持ちでサークルに入ってるヤツがいたとは。
まぁ、そういう人もいていいのだろう。
だが、僕の本能が言っている。コイツの真似はするなと。
「それで、その出会い系は今のところ上手くいってんのか?」
「おいおい、焦んなよ。シーズンはまだ始まったばっかだぜ? BIGBOSSも言ってたろ? 優勝は目指さねぇって」
「……昨日、ホイミはボランティアサークルの女子を10人誘ってたけど、全部断られてた。しかも一人は泣き出したし」
「おいっ、クドウ! 余計な事言うな!」
「なんだよ。打率0割じゃないか。戦力外通告もいいとこだ」
しかし、女の子を誘って泣かれるとは……その時のホイミの心も泣いていただろう。
「それじゃあ、クドウは?」
「……俺は1つ。バンド・軽音サークル」
「おぉ!! バンド! かっこいいやつ来た!」
「クドウって、楽器弾けたのか?」
「……子供の頃からピアノをやっていたからキーボード担当。もう既にバンドも組んでる」
クドウの行動力は凄まじいな。
もう既にサークルに入ってるだけじゃなく、バンドまで組んでいるとは。
ボヤボヤしていた僕達が、大学生活にかなり出遅れているよう感じてしまった。
「まさかオタクが、陽キャの巣窟に自ら足を運んでいたとはな」
「……俺は、バンドのオタクでもあるから。一言付け足すと、バンド・軽音サークルの大半のメンバーは陰キャ」
「えぇ? でもよくライブ行く人とかみんな陽キャじゃない?」
よくT○itterとかで回ってくるライブ行っている人達の写真見ると眩しくて目が痛くなる。
ギラギラしているというか、ザ・陽キャというか。
「……ライブに行くやつは陽キャ。でも実際に大学で演奏するやつは意外に陰キャが多い。というか性格捻くれたやつしかいない」
生々しい話だから反応しづらいな。
クドウの説が正しいとなると、クドウ自身の首を絞めることになるがそれでいいのかな?
「なんだ、ナギとレンはサークル入りたいのか?」
「うーん。まだ入りたいとは言い切れないんだけど、興味はあるんだよねー でもどれに入ればいいか、悩んでて」
「俺もだな。しかもTwitt○rで大学名つけて、ヤリサーと検索しても一つも出てこねぇ。胡散臭い裏アカばっかヒットしやがる」
多分その調べ方は絶対に間違ってる気がする。
自分達はヤリサーです、って宣言するサークルがどこにあるんだよ。
「まぁ、よくあるのは高校とかの部活からそのまま同じ活動内容のサークルに入るとかだな。ナギは高校の時、何の部活入ってたんだ?」
「サーフィン部」
「お、カッコいいな。というか高校にそんな部活あるなんてすげぇ」
「ナギよ。そんな簡単にバレる嘘はやめておけ」
ちっ、レンめ余計な事を。
このまま流してくれれば良かったのに。
「……本当は何?」
「ね、ネット……サーフィン部」
「全然カッコよくねぇじゃねえか!! 何する部活だよ!?」
「じ、自分の調べたい事をひたすらインターネットで調べる」
「なんだ、その一切生産性のない部活は」
こ、これでも一応運動系の部活みたいに競い合いやライバル意識はあったんだよ?
どの検索エンジンが速いだとかで競い合ったし、みんながGo○gleを使う中、僕は一人Yaho○! で戦っていたのは懐かしい思い出だ。
まぁ、この部活、三ヶ月でやめたけど。
「……レンは?」
「俺は調理部だ。週2ぐらいで料理する」
「今のお前のまんまだな。でも高校で、しかも男が料理するんだから部内では相当モテてたんじゃねぇか?」
「いいや? 風の噂で聞いた話によると、調理部の女子部員全員、俺があまりに料理上手すぎて、もはや異性の対象としてじゃなくて一種のライバルとして見ていたらしい。影ではクッキ○グパパ、孤独のグ○メってイジられてた」
「悲惨な高校生活だな」
確かに当時は、女子部員がレンに料理対決を挑んでいた事が多々あったな。
そしてその全ての対決で、勝ち続け、無敗記録を樹立したレンは調理部全員から嫌われていた。
○○○○○
それから僕らは、昼休みが終わって小一時間ほどが経っても元の食堂の席でグータラしていた。
そんな折、近くから僕の名を呼ぶ声が聞こえた。
「あれ!? ナギ、まだ食堂にいたんだ!!」
うつ伏せになっていた顔を上げ、声のする方をすぐに向くと、そこには麗しい女性、詩葉がいた。
おぉ! 詩葉、食堂に来たんだ。
「おーい、俺らもいるぞ?」
「あ……気づかなかったわ。ごぎげんよう、その他のモブ達?」
「俺達の扱い雑すぎるだろ!?」
「冗談よ」
フフフと笑う詩葉。
くぅ……。お茶目な素振りを見られるなんて。
よくやったぞ、僕以外のモブ達。
「ってか、こんなところで何してるの? 講義は?」
「僕とホイミとクドウは、取ってた講義が急に休講になったから休憩中〜」
「レンは?」
「休講にーーした」
「なるほどサボりね」
レンは自主休講らしい。
本人曰く、サボりではなく、あくまで自ら休講にしたと言い切っているが、結局のところサボりである。
「それこそ詩葉はどうしてここに?」
「まさかお前も休講にしたのか?」
「アンタと一緒にしないでよ。私もナギ達と同じ、講義が無くなったから静かなところで勉強しようかと思ってここに来たの」
確かに、昼休憩が終わったこの時間、食堂はとても静かだった。
さっきまでの賑やかさが嘘のようだ。
「ま、ちょうど良かった。前はバダバタしたせいでちゃんと喋れなかったからね。この機会に喋りましょ?」
「え? 僕達結構喋ってない?」
「ナギとレンの事じゃないわ。そっちの2人。ナギのお友達なのに何にも知らないから」
あぁ、クドウとホイミのことか。
確かに詩葉が初めて部屋に来た時はバタバタしてちゃんと会話してなかったからな。
あの時も僕の事しか喋ってないし、ここいらでお互いの事を喋る機会があってもいいいのかもしれない。
「おっと、女性側からのご指名とは。俺は高くつくぜ?」
「……お嬢ちゃん。大人な男性は興味ある?」
「ねぇ、詩葉。本当にこの二人と喋りたいの?」
「……そうね。今更ながら後悔してるかも」
テンションが上がったホイミとクドウを見て、詩葉は頭が痛そうだった。
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