第14話 週刊誌の宣言②
「まぁ、それでも止めに来たら先代から伝わる大学のとんでもないスキャンダルを発動するみたいらしい。まぁ一種の抑止力やな」
「もうサークルの域超えてるよね。大学側人質に取れてるよね」
いつの日か、『週刊BUN秋』にこの大学を乗っ取られないか心配になってきた。
頼むから僕が在学中に、面倒な事はないようにしてほしい。
「でも、サークルか。楽しそうだな〜」
「そいや、レンとナギはサークル入ってへんのか?」
「おう。まだ何とも」
「あんまし興味なかったから」
なんだかんだで、授業とか家の事でバタバタしてたからな。サークルとかについては何も考えてなかった。
そういえば、ホイミとクドウはなんかのサークルに入ったって言ってたよな。後で聞いてみよ。
「もうすぐ大学始まって一ヶ月経過するからな、そろそろ大体のところも募集を締め切りだすで、急いだほうがええで?
ま、とにかくサークル入ると毎日楽しくて仕方なくなるで、是非とも入んなぁ」
確かにトクダネが雑誌を売ってる姿を凄く楽しそうだった。
自分の好きな事を毎日出来るんだから彼にとってはサークル活動が元気の源になってるに違いない。
こうして思うと、僕もサークルというやつに入ってみたい気もするんだ。
「ところでや、ここまで話したであれやけど、なんかオモロイネタある? 内容によっては、学食代ぐらい出すけど」
トクダネはそう言って、おもむろにメモとボールペンを取り出した。
ジャーナリストの血が騒いでいるらしい。
「んー 残念だけど、これと言ってはないかな」
「なんだ、ナギ。あるじゃねぇか。うたーー」
「はい、ちょっと永遠に黙ってようか」
レンが言おうとしたものが瞬時に理解でき、僕はレンの口を塞いだ。
よし……後は息も出来ないようにして。
どうせレンの事だ。詩葉と僕の事を言うに違いない。確かに僕達の状況は客観的にみたらトクダネの言うオモロイネタになるんだろう。
だが、そうは言っても僕の愛しい天使を週刊誌なんかに載せてたまるか。
週刊誌に載った美女が良い目にあった事なんて一度もないからな。芸能界では。
「ん? なんやあるん?」
僕が必死にレンを抑えていたが、その努力むなしく遂にはレンの口を開放してしまった。
「ーー簡単な話だ。最近、ナギが一人の女をありとあらゆる策で籠絡したって話だ」
「なんやそれ、オモロ!!」
「ち、違うよ!! こら、レン、デタラメ言うな!!」
全く、籠絡なんて人聞きが悪い。
「デタラメってほど、デタラメじゃないだろ。事実、朝起きたらお前は部屋に女を連れ込んでたし」
「連れ込んでないよ!! 気づいたら隣にいたんだし!!」
「ほほぉ……部屋にいたのは認めるんやな」
「う……うぅ……」
「ほんで、ほんで? その子とはもうヤッたん?」
「し、してないよ!! まだそれは!」
「それは? じゃあ他に何かしたんやな。キスとか?」
「ね、ねぇ!! なんかやめない!? トクダネの詰め寄り方がガチの記者になってるだけど!!」
トクダネのジャーナリスト魂が火を吹いている。
このままの調子じゃ、本当に僕の全てが素っ裸にされそうで怖い。
「コイツァ! オモロイ記事になるでぇ!! 見出しは『大学始まって一ヶ月も経たずに女をもて遊ぶ性獣現る!! ヤツは女の体のありとあらゆる部分にクリームをかけて舐め回すプレイがお好み』に決まりや!」
「おいぃぃーーっっ!? なんかあることないこと追加してんじゃないか!!」
「なんや知らんかったんか。これが週刊記者のやり方や。盛った方が、目に止まるやろ?」
「盛りすぎだよ!! 目に止まるどころか、ドン引きされるだろ!」
「ちなみにさっき、あることないことって言ってたけど、これ事実やで?」
「どこが事実だよ!! 僕にそんなお好みないよ!?」
「いやこれはワイのお好みのAVのタイトルや」
「ただのど変態じゃねぇか!!」
悪い流れが出来ている。これは非常にマズイ展開だ……!!
こうなったのもヤツのせいだろう。
「おい、レン!! 友人の僕を売ったな!?」
「トクダネ。『大性獣のあとしまつ』っていう見出しでも良くないか?」
「おぉ、ええやないか! 映画にかけたわけやな? 『あとしまつ』ってのも色んな事を想像させられるなぁ」
「無視すんなよ!?」
というかそのタイトルだけはマジでやめてほしい。さらに下品になるじゃないか。
「ナギよ、何怒ってんだ? 売っていいだろ? 俺には学食よりも友人を優先する理由がないからな」
「辛辣過ぎる!!」
だ、ダメだ。このままいけば大学中に僕の悪評が広まる。そしてそれを耳にした詩葉は……そんな姿考えたくもない。
なんとかしなければ!!
そして僕は、トクダネにこれまでの事を流さないよう頼み、その代わりにホイミと権蔵さんのゴシップネタを提供した。
トクダネは大いに喜び、僕の事は記事に書かない事を約束し、去っていったのだ。
ふぅ……なんとか僕の悪評が広まるのを防ぐ事が出来たぞ?
「ちゃっかり、お前も友人売ってるじゃないか」
「あぁ。自分の名声よりも友人を優先する理由がないからね」
「外道じゃねぇか」
お前には言われたくないよ……と言い換えたその時、スマホの通知がなった。
それは詩葉からだった。
次話、サークルに入りたいの宣言に続く……。
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