第9話 なんで場所を知っている?!
午後の仕事、なのだが2班所属と言われたものの肝心の班長が不在という有り様。
「あいつまたどこかでサボってるな!」
眉毛を吊り上げへの字口でマリーが怒る。
聞くと日常茶飯事らしい。
「まあいいや」
そう言って一通りの仕事を教えられる。
審判の門という最初にいた場所で死者への案内とその事に関するレポート業務。午前中にマリー達が突入した場所は死者の受付で主に狐面を着けた女性隊員が対応するらしい。
「女性の方が親切な印象だし実際評判が良いのだそうだ。ただ、ちょっと困った連中がごねて人質になりやすいのが難点だなあ」
大概そういう時の荒事は第2部隊1班と3班、時々5班が担当になるそうだ。
「ま、ここで痛い目に会っておくと地獄では大人しくなるそうだ」
説明しながら書類を書いていくマリー。
「…席そこだったか?」
「机の主が不在だし、書類が大量だし、仕事教えるには近い方がいいだろ?」
そう言いながら猛スピードで書き物を終わらせていく。
「仕事早いな!」
「他の隊員の書類チェックも仕事のうちなんで自分の仕事は早く終わらせたいんだよ…始末書書きもあるし」
ああ、そういえば。
そんなこんなで午後の仕事も終わり、
「さて、約束してた不動産屋を紹介しようか」
昼間の食堂横に間の町への通路があって、町の入り口で待ち合わせをしているそうだ。
服を着替えて通路へ行くと私服姿のマリーが待っていた。タートルネックに上着を羽織り、ズボンという服装だ。
「町までは距離があるから一部ショートカットを使ってるんだ」
「…またあの扉か?」
「ご名答!まあ一般向けでそんなに空間酔いは無いと思うぞ」
そう言って町へ出る。あの扉をくぐった時の吐き気は今度は無かった。
入り口に中肉中背の男の鬼が立っていた。
「あ! 初めまして! 今回住まいをご案内させていただく青島と申します」
ご丁寧な挨拶と同時に名刺を差し出された。
「さて、まずは条件に合ったお部屋をご案内いたします。10階建てマンションで家具家電は揃ってますが好みでご購入されても構いませんので」
そう言いながらマンション等が立ち並ぶ住宅街へ案内される。
その時、
「あ、私は夕飯の買い物があるから。あとは任せたよ」
そう言ってマリーは別方向へ向かっていく。
「えっ!? 最後まで付きあうんじゃないのか!?」
「私、女子オンリーのシェアハウス住まいで、今日ご飯担当なんだよねえ。じゃ!」
そう言って急ぎ足で賑やかな方向へ行った。
「じゃあこちらの物件になります」
気を取り直して案内された部屋を見てみる。二人で暮らすには充分な2LDKだ。
「ここでいいです」
他を廻る気もしなかったので即答で決定した。 すぐ目の前にコンビニもあるそうで、早速夕飯を買ってきた。
部屋へ戻ると即座にピンポンラッシュ。
「誰だ!?」
ドアを開けると辻と奥さんの…確か凛さんという名前だったか。二人が立っていた。
「なんで家知ってるんだ!?」
「コンビニに行くのが見えたから。アタシの家もここの上の階なのよ」
なんてこった! こいつと同じ棟なのか…。
即座に引っ越したいと思ったが金がなく、無理だと思ったので泣く泣く諦めた。
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