血縛
晴れ時々雨
🦇
血の匂いがする。さもしい欲求の虜になり匂いに引き寄せられるがまま女についていく。月に一度排出される不純物を多く含んだ不必要な血液の匂いを漂わせる女という生き物。月と呼応しているっていうのが粋じゃないか。街では股を食い破られる女の噂が出回っている。不要、不浄、まるで私のようだ。
私はおまえたちが汚れていたって平気だよ。かつては私もそうだった。それに、分泌物の混じった血を啜ると肉を食ってるような気分になれる。
女たちは、男とは違う私に容易に体を委ねてくる。恥じらうことなど何もない、同じ性同士への僅かばかりの好奇心を疼かせて誘われるに任せ体を開く。
女の陰部から薔薇が零れる。腥く、官能と食欲を喚起する匂いを放ちながらどろりと緩く花弁を開く。花に這わせた舌の上の血塊の香りが鼻腔を抜け脳天を突き上げる。
月経の羞恥とそれを無視できる気安さと物珍しさと快楽に目の眩んだ女の甘く陽気なはしゃぎ声は、私の四肢を支配する飢えからは遠い。
舐めとっても舐めとっても新たな薔薇はじわじわと咲くが次が待ちきれなくて陰唇に牙を立ててしまう。今度は信じられないスピードでさらさらの血液が喉に流れ込み危うく溺れそうになる。濃い鉄の匂い。喉を鳴らし、一滴漏らさず飲み干す。
異常に騒ぎ出す女の足に爪が食い込む。なんの抵抗もなく。なんと柔い。
白い太腿を握り潰しながら女の股に顔をうずめ出てくるだけの血を吸い上げると、煩かった女は不機嫌な鴉みたいな声を絞りだして黙った。
白身に突き刺さった爪を抜き取って舐め、変な位置にくびれのできた太腿の血を舐めた。
ベッドは皺が寄っただけで染みひとつない。彼女の血液はすべて私に移動した。口を拭い拭った血を舐め色の抜けた女を見下ろす。
もう月と呼び合うことのなくなった女。私が未だに縛られているものから解放された、生きていた物。私が解放されるときも誰かが見下ろすのだろうか。それはおもしろい。最期の瞬間に誰かがそばにいるとは、なんと贅沢なのだろう。
血縛 晴れ時々雨 @rio11ruiagent
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