第3話おばあさんならぬ、汚婆さん?
これまでの発言から、マリアンが教養を受けていない、または、変な教わり方をした事は頭が痛い程わかった。
悪気があった訳ではない。間違いは正せばいいじゃないか。強い意思を持て俺。
マリアンの両肩を掴む。
「マリアン、良く聞いてくれ。人のお金を取っちゃダメなんだ。」
「はい。だから寄付と言う事にしました。」
何か問題でもありましたかと言いたげなマリアンは、きょとんとしている。
本人の了承のない寄付ってこの世にないんだよマリアン。天使の笑顔が悪魔の微笑みに見えるよ。
「勇者様の多大なる慈悲に、神も喜んでいる事でしょう。」
慈悲ではなく、マネーの方の自費だね。それ。
わかる。わかるよ。救える命、救いたいよね。
たまには聖女様でも、羽目を外したいよね。
その通りだと思うよ。
ただ、人のお金を勝手に使ったら不味いでしょう。
まずは、俺の
「言い難いんだが、本人の了承のない金を使う事は罪になるんだ。あのお金は大事なお金で、マリアンに寄付出来る物じゃないんだ」
マリアンは口に手をあて、信じられないと呟き、段々と目がうるうるしていく。
「まぁ…私は何て事を…そうだったのですね。婆やは……寄付にすれば問題ないと言っていたのですが……」
「婆や?そいつがそう言ったの?」
「はい……困っている私を……勇者様は見捨てる事はないのでと言って下さいました。あの日の事を思い出し……私は…」
その場に崩れ、泣き始めたマリアンの言葉は聴こえにくい。
「婆やは教会の寄付金を管理し……」
マリアンがチラリと後ろを見たのを、俺は、見逃さなかった。
振り返ると、後ろには俺を案内した老婆が端からこちらを伺っている。
マリアンの心を汚したのはお前だな?
婆さんならぬ、汚ばあさん。
「ばあさん、やってくれたなあ。俺の金を返せ」
声を張り、強い口調で言った。
ばあさんは、盗んだ事がバレたと悟ったようだ。
だが、悪びれる素振りもなく、むしろニヤニヤと笑っている。
「はて?勇者様の金とは?もしや、寄付した物を返せとは言われますまい。」
「寄付?マリアンに空間魔法の干渉までさせて奪っといて、何を言いやがる」
「勇者様、証拠もないのに、そのような事を神の前で言ってはなりませんて」
ケッケッケと気味の悪い笑いかたをしている。
神様、女神様よ。見てる?今の現状を見てる?
あんたの信者はどうなってんのよ?
おーい留守ですかー?
それとも、出たくなくて居留守ですかー?
やれやれだぜ。
「証拠ならあるぜ、ばあさん、空間魔法に干渉した証拠であり、寄付していない俺が寄付した証拠。爪がガバガバなんだよ」
勢い良くマリアンの直筆の紙を見せる。
これが無かったらワンダーランド・ニワニワ・ワニワニ――――る。
略してパニックだったぜ。
年貢の納め時だなと思った時、ばあさんの様子が変だ。
先程までの笑いから、今度はグッ……グッと喉の奥から声を絞り出していて、不気味さが怖さにかわる。
悪魔に変身するのではないか、と思われた時、ばあさんはツバを撒き散らしながら叫ぶ。
「神に……使えて数十年………私だって男達にちやほやされたいんじゃー。」
語尾が教会内に反響し、こだましている。
えっ何?
ここの信者さんは欲望に忠実すぎないか?
ばあさん、欲望のバランスおかしいよね。
明らかに性格がマリアンに移ったよね。
いらない所似ちゃったパターンだよね。
もうヤダよこんな宗教。
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