第1話どうしてこうなる?

「やりやがったな」


 汗っかきになったなぁ俺は。

 目から大量の汗だ。


 えぇ、確かに俺は言ったよ。

 他に何もいりませんって、だけど、念願の魔竜討伐だよ。


 無報酬ってボランティアですか?

 勇者の活動はノーマネー、ノーサプライズ、ノーセンキュー、三つ合わせて伝説しあわせって事?


 それにしても、勇者で無くなった今、私物ではないので剣や鎧、支給品のアイテムは没収って、あの宰相達は盗賊の子孫か何かですか?


 悪魔にでも魂売っちゃった?

シャッチョーさん、ヤスイーヤッスイヨー。

 今ワタシ、ワタシヤッスイヨー言っちゃった?



 代償はあったが俺はもう自由。はばたく鳥さ。


 魔竜の報酬は無くなったが、今までの分がある。

 今日はもぅ動きたくないし、考えたくない、街の宿に泊まろう。


 心のアンタッチャブルだぜ。




 宿屋で食事もしようと視界に映る看板を読んで探すと、一つの看板が目に留まった。


 扉を開くと、受け付けにかっぷくの良い亭主が、カウンターからこちらをニコニコと見ている。


「一泊、銀貨三枚になります。朝晩食事付きならプラス銀貨一枚枚になります」

「食事付きで」


 収納魔法で空間に手を入れる。

 取り出した袋から、お金を出そうとしたが、見た目でわかる。

 おかしい、袋がぺったんこだ。そして、あまりにも軽い。


 あらら?どうなってんのよ?


 袋を逆さにして見ると、数枚の硬貨がカウンターで転がる。


 銅貨四枚。

 …………はい?


 勇者って魔物達を討伐して、素材売りまくって、それでも王宮から借りた物より強い装備がこの世に無くて、いやぁ、もぅカネが余って使い道がないんですよ。


 とかが一般的じゃないですか。


 私、さっきまで勇者だったんですけど?

 魔竜討伐までパンパンに膨れていたんですけど?

 勇者で無くなったらお金まで無くなるんですか?


 困惑する俺を余所に、宿屋の主人が呆れて、これじゃあ泊まれませんねと罰が悪そうにしている。


 要約するとこうだ。

 ヘィボーイ。今から三秒だけ待ってやる。

 一言でも口を開けばお前のケツにこの――。


 出ていくしかなかった。


 最後に袋から一枚、ヒラヒラと手のひら程の紙が舞う。


 ー勇者様、教会への寄付に感謝ー

 ー聖女マリアンよりー


 キャモーンマリアンッ。おしりペンペンだぜーッ。

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