な、なんだったんだ...?
「お、お母さん!?」
僕がここにいるはずのない人が急に現れてびっくりしていると、お母さんはむすっとした顔で、僕のほっぺたを伸ばしながら、
「千秋~?違うでしょ。私のことは、お母さんじゃなくて~?」
「は、ほめん、はは。(ご、ごめん、まま)」
僕のその言葉に満足したお母さんはほっぺたを伸ばした手を放して
「ふふん、それでいいのよ。」
な、なにがそんなに違うんだ...?
「気持ちの問題よ~」
「あ、当たり前に心読んでる...」
「若葉も、千尋も久しぶり~2?いや3か月ぶり?」
「マ、ママ?」
「いや~、さすがに子供のピンチには飛んでこないわけにはいかないわよ。」
「文字通り、飛行機でね...」
「ま、お父さんに仕事はある程度任せたけど!」
お、お父さん...頑張って...
「ちょ、保護者の方ですか!?」
「ええ、そうよ。ここにいる3人の母。」
「あれ?お仕事の関係で海外にいるはずでは?」
「あなた話聞いてなかったの?千秋!このバカに説明してあげなさい!」
「ば、バカ!?あ、あなたなんてことを!?」
「あーえーっと...多分話を聞いてすぐ飛行機に乗ってきたんだと思います...」
「こ、校長に向かって!ば、バカとはなんだ!急に学校に入ってきたうえに1人の保護者の癖によくもそんなことを!?」
「まぁそう怒るな。バカにバカと言っても何も問題はないだろう?」
「ま、また!?」
「お前、校長になって自分がトップだと勘違いしてるだろ?」
「な、なにがおかしい!この学校で一番偉いのは私だ!」
激昂している校長を完全に無視してお母さんは僕達に話しかける。
「あんたたちが色々と頑張っていたことは聞いてるけどまぁ私にまかせなさい。」
「結果も大事だけど、それより色々頑張ったその過程こそが更なる成長の秘訣よ。」
なんなら僕達に保護者として学びを与えてる...?
「そこの椅子にでも座って片耳ぐらいで聞いておきなさい。まぁ聞かなくてもいいけど。あ、そうだ!今日の夕飯のメニュー考えてもらおうかしら?」
ま、マイペース...しかも千尋とは違うタイプの...
「話を戻そうか。あんたが一番偉いって言うけど、さすがに“教育委員会”って知ってる?」
「馬鹿にするな!し、知ってるに決まっている!」
お母さんはそういう校長を横目にスマホを取り出してなにか探し物をしている。
「えーと...あ、これか。」
「な、なんだ急に携帯なんていじって!」
「えーと教職員人事班、班長、
「な、」
「教育委員会事務局、局長、
「教育委員会、会長、
「あとは文科省のトップ、とか?名前とか出さなくてもわかるでしょ。」
なんか、よく分かんないけどお偉いさんの名前を探してたみたい...?
「そ、それが何だって言うんだ!この件と加賀さんがなんの関係がある!」
「まぁこの4人ってこの県で働く教師にとってよく聞く名前だと思うんだけど...」
「そりゃあそうだろう!だってこの県の学校の管轄にあたるいわゆるトップなんだから!」
「そりゃそうだ、あんたなんかよりもよっぽど偉い人だ。」
「君らが隠そうとした私の子供の学校の対応に関する件などの報告をした。」
「は?」
「だから、いま名前を挙げた人たちに!今回のあんたらのおこないを話したって!」
内容を理解した校長は大声で笑い始めた。
「は、ははは、そ、そんなわけないだろう!できるわけがない!」
「冗談と思うならそれでいいけど、もうちょっとで捜査始まるし。」
こんこん
「すいません、校長先生はこちらですか?」
「な、嘘だ!」
「すいません、県教育委員会の者なんですけど、不祥事の隠蔽が複数件発覚したということなので、他にも余罪がないかの調査に来ました。一応こちらが令状です。」
「ちょ、ちょっとまってください!いくらなんでも令状をだすのが速すぎますよ!」
「あぁ、なんでも文部科学省の大臣が直々に早急な改善を指示されたらしいです。」
え、うちのお母さんなんかすごい人とつながり持ってるんだけど。ほんとに何者?
「はい、これであんたも終わりね。」
お母さんはあまりにもあっさりと言う。
「あんたがうちの子供にいらないことするからいけないのよ。」
「私の子供が通う学校の事情ぐらいいつでも知れるようにはしてたわ。まぁ面倒くさくて見ていなかったけど...本当に千尋には申し訳ないわ。ちゃんと色々確認しておけばよかった。
「やることはやったし、さ、先に家かーえろっと!あんたたちも学校終わったらすぐ帰ってくるのよ?私が珍しく家にいるんだから。」
「う、うん分かった。」
というとお母さんはこちらに手を振りながらドアを開いて去っていった。
「な、なんだったんだ??」
なんか色々、全部終わっちゃった...ていうかあのお母さん何者?
まぁ僕のお母さんなんだけど......
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