第50話 公爵令嬢の復讐
そろそろ水晶の谷の修行は終わりそうかしら?あそこは特殊なため私の持っている水晶には様子が映し出されないのよね。お祖母様にジェットの身体を見て欲しいと手紙を出しておいたら昨日ようやく返事が返ってきたの。
私は出かける準備をしていると扉をノックする音が聞こえてきた。
ー コンッコンッ ー
「どなたかしら?」
私は扉を開けるとそこには1人の令嬢が従者、護衛と立っていた。
「初めまして、魔女様。私、レイニード公爵が娘、ラッカと申します。」
ラッカという娘は扇子で口元を隠しながら話し始める。
「まぁ、兎に角、部屋に入って頂戴」
私は部屋へと案内し、席に座らせる。
「で、御用は何かしら?」
ラッカは私の出すお茶を飲むと不思議そうな顔をしている。
「あぁ、このお茶ね。毒消しよ?貴女、毒を盛られているわね。微量だけれど、長い間。調子が悪そうだったもの」
ラッカは自身に毒が盛られている事を私に指摘されて驚いている。
「魔女様、その事なのです。私は追放という名のランサールという国の王太子の第25側室として嫁ぎに行く予定なのです。元々サン国の王子と婚約していたのですが、罠に嵌められたのです。その後も私を狙った事件が続けていますの。
悔しいのです。私は何もしていないのに。冤罪。着せられた上、愛されもしない側妃になる。従者も連れて行けず、誰も知らない異国の地に私1人」
ラッカは感情を露わにしている。
「ふぅん。よく分からないけれど、貴女はどうしたいのかしら?」
「魔女様、サン国の王子や私を陥れた令嬢達、ランサール国の側妃達を蹴散らせる程の美しさが欲しいのです。全ての者が私に平伏す程の美貌が欲しい」
「そう、美しくなって復讐がしたいのね?いいわよ。対価はなにかしら?」
ラッカは目に強い光を宿し、従者から箱を受け取る。
「魔女様、対価はデメテルの吐息と呼ばれる花はどうでしょうか?」
箱には白く輝く小さな花が三輪収められていた。
「あら、素敵じゃない!良いわっ。気に入ったわ。良い物を持って来たわね。ちょっと待ってなさい。今薬を作るわ」
私は久々に浮かれている。だってデメテルの吐息ですもの。この花は人間達にも珍しい花ではあるのよ?
この花の咲いている場所が限られているのよね。私達では採取する事の出来ない、人間以外摘む事が出来ない神域と呼ばれる箇所に咲いているの。教会は聖域にある場合も多く、ユニコーン等の聖獣は入る事は出来るの。
けれど神域ともなると神と交信するための人間しか入れない貴重な場所なのよね。そこに咲いている花は私達にはとても貴重なの。ラッカのために腕を奮うわ。
私はガロンを呼び、虹の花や雪の実、娑羅の樹氷等、魔力と共に練り込み薬を作っていく。ガロンは久々の薬の手伝いに上機嫌だわ。
「ラッカと言ったわね。お待ちどうさま。『従者と護衛は寝ていなさい』」
私はそう言って護衛達を眠らせ、ラッカをベッドのある部屋へ案内する。
「これを全身に塗るから全て服を脱ぎなさいな」
ラッカは恥ずかしそうにしながらも覚悟を決め服を脱ぎ捨てた。私はラッカを立たせたまま、全身に薬を塗り込めていく。
「魔女様、薬を塗った箇所からひりつくような痛みと熱さを感じますわ」
ラッカは懸命に痛みに耐えている。
「ラッカ、後少しよ?この薬が皮膚から体内に取り込み終えた時、貴女は絶世の美女となるわ。ただし、不老不死では無いからそこは恨まないでね」
「分かりましたわ」
私は薬を塗り終わり、薬の定着のための唱詠を行った。
「ラッカ、薬は無事定着したみたいよ。鏡をご覧なさいな」
私は魔法でラッカの前に鏡を出し、確認させる。
「これが私…?魔女様!ありがとうございます。嬉しいですわ。これであの人達をギャフンと言わせ、復讐する事が出来ますわ!」
「あら、良かったわ。私の魔力がほんの僅かだけれど体内に残っているから微量の、人間には感知する事が出来ない程度だけれど魅了が付いているわ。初対面で好感が持てる位の影響はあると思うわ。では残りの人生楽しんで頂戴」
ラッカは従者達を起こし、帰路についた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます