第46話 貴婦人の悩み 人間の器

 私はニコニコとサーバルと話しをているとガロンが声をかけてきた。


「サーバル、大きくなりましたな。元気そうで何より。サーバルの活躍は耳にしておしますぞ」


サーバルは自分の記憶を探ってる様子。


「貴方はもしや、ガロン様?父の教育係の。お久しぶりです。父は元気ですか?」


ガロンはニコニコしながら答える。


「カインは今魔法の修行中。もうすぐ修行も終わりそうですぞ。ところでオリーブはもう森へ帰ったのですかな?」


「いえ、契約は終わったのですが、何分カーサスがこの様な感じなので偶に指導に来てくれてはいます」


「ふふっ。オリーブも心配で目が離せないのね。まぁ、世間話はこれくらいにしてガロンそろそろ行かなくてはね。ではサーバル、カーサス。またね。カーサス、しっかりとサーバルの話をきくのよ?」


「魔女様、いつまで俺を子供扱いしてるんだか。俺はもう子供じゃないから大丈夫だ」


「そう、ではね」


そう言って私達は固まった人達と一緒に転移する。




 転移した先はというと、いつもの自宅ではなく、深淵の森の奥深くにある一軒の屋敷の前。


ー カランカラン ー


 ベルが音を立てて主人を呼ぶ。


「誰かしら?私を呼ぶのは」


出てきたのは1人の女性。


「お母様、お久しぶりですわ」


あらあらと微笑みながら部屋の中へと案内してくれる白衣を着た母。


 見た目は20代半ば程の妖艶な雰囲気を持つ魔女メーデイアが私の母。父と仲は悪くないのだが、薬の研究に明け暮れているため自然と別居になっている。気が向いたら城には帰っているらしい。私の顔はもちろん母親似。


「エイシャ、どうしたのかしら?突然研究室へ来るなんて珍しいわね」


私は母と玄関横にあるサロンに入り、ガロンにお茶を淹れてもらう。母の研究室にくるのは本当に久しぶりだわ。玄関に置かれた植物やサロンに置かれている植物の数々。ここは植物園ですかと言いたくなるほどなのよ。でもびっくりするほど統一感が無いのは残念な所なのよね。


「やはりガロンの淹れるお茶は美味しいわ。エイシャ、ガロンを貸して頂戴」 


「お母様には別の者が居るでしょう?それに私はお祖母様から借りてるだけですもの。それと、家の外を見たかしら?15体程人間の器を手に入れたので今日ここに来たの。お母様、何処に置けば良いかしら?」


母は人間の器と聞いて目を輝かせている。


「今使っている人間もあと数年で駄目になりそうだったのよね。助かるわ。これでまた秘薬類の研究が進むわ。そうね、玄関にでもとりあえず入れて置いて。ガロンお願いね」


ガロンは何も言わず、一礼してから部屋を出る。


「そうそう、ネメアーから聞いたわよ。彼、カインって言うんですって?彼は執事になるのかしら?それともナイトかしらね?お祖母様も気に入っているみたいだし、彼の未来は明るいわね。エイシャも気に入っているんでしょう?」


母はいつになく聞いてくるわ。母はカインといつ会ったのかしら?いえ、会ってはいないはず。研究室で暇潰しに見ていたのね。


「お母様、まだ分からないわ。それはカイン次第ね。さて、搬入も終わったし私は行くわ」私はお茶を飲んで立ち上がると母が呼び止める。


「あぁ、ちょっと待って。どうせカイン君の所に行くんでしょう?私からのプレゼントを渡して頂戴」


目の前に浮かび上がった茶色の小瓶。とてつもなく怪しいわ。


「お母様これは?」


「ふふっ。内緒。出来たばかりの新薬よ?是非カイン君に飲ませてね」


お祖母様といい、母といい、何故カインを実験台にしたがるのか不思議だわ。私はそう思いつつ小瓶を受け取りガロンと家に帰る。家では待ちわびていたかのようにジェットが抱きついてきたわ。


「エーシャ、遅い。お腹減った」


「遅くなってごめんなさいね。今用意するわ」

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