悟りゲーム 回想編(パート6.5)
@sorano_alice
第1話 アリスの日常
まず初めに、主要人物。
横口未来(よこぐち みらい) ベージュの髪をした優しい少女、芯が強く、善人、その言葉が一番ふさわしい人物。合唱部に所属している。とある人物に心を開いてもらうと誓った。とある人物の自殺を阻止することを決意。(ただし、今回の話では登場しない)
黒龍連(こくりゅう れん) 赤い髪と少し長い髪の外見。高校最強の武力を持つことで有名な男性。この地域で名を知らない者はいないだろう、暴力で支配してきた。それなりに人望も高い。また、相手の目を見るだけで大体の相手の特徴を掴むことができるという感を持ち合わせているがどうしてもどうつかみきれない相手が一人いるらしい。何としても本性を暴く模様。高校一年生。(ただし、今回の話では登場しない)
新谷朱音(にいや あかね) ピンクのロング髪と小悪魔的性格で都市伝説や噂話などが好きな情報通。高校一年生。親友は横口未来。バドミントン部に所属していることが判明。また、将棋が上手い。とある人物を自分のものにすると誓った。独占欲が異常に高い。
花野アリス(はなの ありす) 初めはいじめられていた黒いパーカー服を着た青い髪の三つ編みの小柄な少女、自殺願望者であったが未来やほかの仲間たちに出会い徐々に心を開き始めている。中学一年生。とある人と絶対に興味を示すようなゲームを作ると約束した。自分一人でも困難に立ち向かい理想の人物になって見せると決意。
明智香(あけち かおり) 銀髪ロングの髪をした中学三年生。その可憐な姿とは裏腹に運動神経抜群。今は引退したが元女子テニス部の部長をしていた。落ち着いていて冷静である。とある人物に何としても先輩としてテニス部に興味を持たせると誓った。(ただし、今回の話では登場しない)
天野天理(あまの てんり) 赤髪ロングの中学一年生。服装、私物、あらゆるほとんどのものが赤、テニス部に所属しているが控えめに言って下手。黒龍連が唯一つかみきれない相手でもある。その他チェスが上手い。今回の参加者の中では一番謎が深い人物。何事にも興味を示さない。たとえだれであろうと信じないと決意。
大道寺さくら(だいどうじ さくら) 短髪のいかにもスポーツガールという言葉がふさわしい、運動神経抜群、明智香と天野天理とは同じテニス部で大親友。しかし、頭はよくない、馬鹿と言われることもしばしば、常にポジティブ思考。アニメが好きでSNSでは自分の好きな男キャラになり切って話すことが多いらしい、いわゆる中二病。中学一年生。ゲームを通じて少しずつではあるが実力を認められつつある。とある人物に必ずふさわしい実力者になると約束した。
11月もあと10日を切ったある日、明日は金曜日、最後の学校だ。夜になり黒いパーカーの少女は小さな自室で何かをしていた。勉強かと思ったが彼女がしていたことはゲームを作ること。自分が作ったゲームにも関わらず最初の命を懸けたゲームでは未来に敗北し命を落とし世に知らしめるという願望がかなわず、日常生活に戻る。それから新たに何度もゲームを作った。しかし、自分が作ったゲームにも関わらず未来や天理に完全敗北しているアリスである。
そんな中、彼女は気づいた、新たなる脅威を。それはもしかすると未来、天理をも超える脅威になりえないプレイヤーがいることを意味する。
黒龍連
「いかにも攻撃的なプレイヤーだ、ただ、協力ゲームとなると黒龍の性格上従うより命令する立場のほうが多そうだ。彼は命令するよりも王に着くリーダー格、宿将とでもいうべきか、それが一番恐ろしい、もし彼が単独行動で潰すという思考を放棄し仲間と協力し合える性格なら?攻撃的一手ではなく逃げの一手も使える防御的な判断もできるプレイヤーならそれは脅威となる」
明智香
「天理とさくらの先輩であり非常に冷静な判断ができるのが見て取れる。しかし彼女の短所は自分を貫かないこと。協力ゲームで僕と組んだ時もそうだった。彼女は自分の意見よりも他人の意見を尊重する。それは長所に見えて短所でもある。もし彼女が命令する立場なら?もし黒龍が明智の指示通りに動き冷静に物事を勧めれば彼女と黒龍の真価は発揮される。新たな可能性を持つ黒龍に命令し指示することで前のような協力ゲームでも勝てたかもしれない」
横口未来
「圧倒的優しさからそれは実力ではなく人望、協力ゲームで一番欠かせないものを兼ね備えそして運をも味方につける、おそらく唯一あの黒龍でも従うかもしれない人物だろう。ゲームは強さだけが全てではないことを証明した、最初の命を懸けたあのゲームから、だからこそ敵に回しては危険な人物だ」
天野天理
「未来との勝負を終え、少しずつ仲良くなった、それと同時に倒すべき相手でもある。日常に戻されて創り上げた僕のゲームに何度も勝ってきた。僕は天理に何度も打ち負かされている。天理は読めない、でも話して分かったのはチェスが上手いくらいだろうか。あとは赤が好きなのだろうね。僕にも、さくらにも、この人間すべてに関心を示すこともなければ僕のゲームにすら関心を示さない、いつか必ず興味を示させてやる」
新谷朱音
「日常に戻されて3度あったゲームのうち一度だけ参加できなかったもののそのうち二回、どちらも僕を打ち負かしている。それにチームは二度も天理と朱音。朱音は未来の親友ではあるもののまだ読めないところも多い、もしかすると天理ではないのではないか?裏で暗躍しているのは天理ではなく朱音ではないのか?本当の脅威は天理ではなく朱音という線は十分にあり得る。天理以上に警戒する必要が出てきたかもしれない危険な存在だ」
大道寺さくら
「さくらは結果だけ見ればすべてのゲームに敗北している。しかし、彼女には親友である明智の冷静さと天理の謎の思考を併せ持つ存在でもある。実際最初の優勢者、劣勢者、反逆者で未来という脅威を排除した冷静さは明智の思考か?天理の思考か?それとも彼女自身の、そして天理をあと一歩のところまで追い詰めたのも彼女だ。さらにカードを使った協力ゲーム。一回戦は黒龍とさくらと正直言って相性が悪い。どちらも命令されて真価を発揮する。そして改作された二回戦。これは命令した僕が下手すぎた、さくらの力を最大限に活かすことができなかった。さくら自身は確かに天理より点数が悪いし馬鹿なのだろう。だが、間違いなく僕がゲームを開催するにつれて一番力をつけ、学んでいるのはさくらだ。そのうち黒龍、明智、未来、天理、朱音、そして僕全員を掌握する人物かもしれない」
改めてアリスは気づくのだった。
「僕は勘違いしていた。このゲームをしていく中で一番の脅威は未来、天理だと。だが実際は違う。もしかすると裏で朱音が暗躍している可能性が、そして一番の危険人物はさくらだ。実際さくらは未来とも天理とも朱音とも組んだことがない。もし組まれたらと思うと…」
アリスの中で朱音とさくらの脅威度が跳ね上がる。
「それに比べて僕はなんの長所もないじゃないか、短所ばかりだ。これでは足手まといだな、僕はゲームに向いてないのか…ぅっ…」
アリスは暴力を受けていたのかはらわたを抑える。天理のクラスメイトからいじめを受けることはなくなっていた。しかし、他のクラス、上級生からのいじめはまだ終わっていない。
「はぁ…はぁ…案が思い浮かばない、何か思考を変えられることがあれば…そういえば天理はチェスをやっていたが相当強いらしいな、僕が相手をしたら死体蹴りされるな、そうでなくても天理に何度も打ち負かされているのだから。僕も負けず嫌いになったものだな、チェスは避けよう、天理に負けたくない。チェス以外に駒を使ったゲームでもあれば案が浮かぶかもしれないのに」
アリスはチェスはできるものの天理に負けることを恐れ天理とチェスをすることを避けた。
翌日
「はぁ…学校か、見つからないようにいかなければ」
アリスはいつものように黒いパーカーに着替えるも何も寝ているときからずっとパーカーを着ている。洗濯はしているのだろうか。いつものように遠回りして裏路地を通り学校に登校する。学校の先生の目がつく範囲、または天理のクラスの教室までたどり着けばいじめられることはない。アリスのいじめっ子は陰湿のため先生に気づかれないところではいじめはせず天理という最強の生徒の目の届く範囲では手が出せないのだ。
だからと言って裏路地登校を辞め、堂々と登校すればいいのではとは思ったが赤の他人が見ている前では普通に振るってくるため裏路地登校が癖になり、いつしかアリス自身も暗いところを好むようになった。天理を赤色の女性と呼ぶならアリスは黒色の女性だろう。
今回は登校中は何とか逃れたアリス。教室に入ると最初に浮かぶのが赤き女性、天理だ。その前で話しているのはさくらだった。
「やぁ、天理、さくら」
「おはよー、アリスちゃん」
「アリスか…」
「最近は案が浮かばなくてね、何か頭を使うことでもできればいいけどね」
「ゲーム?またやるの?じゃあさ、チェス同好会来ない?」
さくらの言葉に目をそらす。完全に負けず嫌いになっているアリス。
「遠慮しておくよ、僕はあまり得意じゃないからね、それに天理がいるじゃないか」
「天理ちゃんに勝てないんだよー」
アリスは天理からさくらと明智もチェス同好会にいることを聞かされているがさくら曰く天理はチェス同好会で一番強いらしく明智は天理の次に強く、さくらはそこまで大したことないらしい。だが、今のアリスはゲームで負け続け自信を失っている。
「君ならいつか勝てるさ、僕のゲームですらね」
それだけ言うとアリスは席に座り朝礼が始まる。
昼休み、天理、さくら、アリスはいつものように朝食を取る。
「私取る気なかったけど補習…」
「私もだよー、まあ私馬鹿だからね」
「僕もだよ…僕も数学以外ほぼ補習だからね」
「日本語って難しいねー、今回のめちゃくちゃ難易度高くて私の友達もほとんど補習だってさー」
天理、さくら、アリスは全員国語のテストで補習になったらしい。天理はわざとではなく本当に今回は補習になったのだろう。もう、部活も普通にいけるようになっていた。天理の成績は良いとも言えないし悪いとも言えない普通だ。今回のテストは普通に難しかったらしい。
さくらは何かを思い出したかのように
「あ、そうだ、天理ちゃんと私部活遅れるーって補習じゃない友達に言っとくねー」
「ん…」
さくらは行ってしまった。
「はぁ…全く、僕は少しでも頭をリフレッシュしたいものだよ、ゲームを考えないといけないというのに」
すると天理は何かを思い出したのか思い出してないのかよくわからない表情でアリスに言う。
「チェス同好会の隣の教室…将棋…」
「将棋かい、確かに頭はリフレッシュできるね、でも天理みたいに話せる人がいないからね」
「朱音さんがいる…」
「朱音かい?それは面白いかもしれないね、感謝するよ」
朱音はまだ天理ほどではないもののつかみきれないところがある。アリスにとっては一石二鳥だ。
するとさくらが戻ってきた。
「伝えてきたよー」
「ん…」
しかしアリスはまだ知らなかった。将棋同好会で一番強い人物が朱音だということを。
補習も終わり下校時間。天理とさくらはテニス部へ、アリスは部活に通っていない。
「んじゃ…気を付けて…」
「なんとかするさ」
アリスの苦行はここから始まる。
第一にいじめっ子から逃れる。
第二に逃れつつもコンビニで夕食を買う。
そして最後に家に着く。
これからがアリスの地獄の始まりだ。まずは一人生徒に見つかったが天理のクラスメイト。天理の影響により手は振るってこない。
続いて会ったのは琴吹海士だ。もちろん手は振るってこない。
「あ、アリスさーん、お姉ちゃんアリスさんたちの話ばっかりしてましたよ」
「ゲームの話でもしてたのかい?」
「そうです、アリスさん褒め散らかしてましたよ」
「僕は褒められたことはしてないんだけどな」
「ゲーム作るの上手いんですね、羨ましいです」
「そ、そうかい」
「あ、僕今日急いで帰るよう親に言われてるんでお先でーす」
「気を付けるといいよ」
海利は何を話していたのだろうか。
「利用されて喜ぶなんて変わって人間もいるものだね」
月山礼、琴吹海利、先日のゲームを通して少しではあるものの距離感が縮んだ。そんな気がした。
「そう、僕がゲームを創り出す、その真の目的は…」
その目的はアリスにしかわからないのかもしれない。いまだにつかみきれない朱音、そして朱音以上に謎が深い天理、彼女たちゲームの勝者にすらアリスの目的は理解できないだろう。そういう意味ではアリスは他の参加者全員に勝っていた。
コンビニに近づいていくアリス、しかしなぜかアリスの顔がこわばっていく。それはなぜか、この場所こそが一番襲撃されやすく一番被害を受けている場所だからだ。
今回はアリス側がいじめっ子の一人を見つけたため路地裏の物陰に隠れる。するとその反対方向から二人組のいじめっ子が迫ってきていた。後ろから見つかったのだ。
問答無用で振るわれる暴力。アリスが先に見つけたいじめっ子にも気づかれ3対1、もちろん勝ち目はない。これが黒龍や天理なら返り討ちにできていただろう。
二人は天理のクラスメイトではない同級生と思われる生徒、そして気づかれたもう一人は上級生。二人の生徒は上級生に従うかのように徹底的にアリスを痛めつける。
アリスは弱い、平均よりも力はなく圧倒的に体力もないためアリスが暴力で抵抗したところで無力なのだ。
「いいさ…僕は所詮…ぅぐぅっ」
アリスは小声でつぶやく。
「はぁ?なんか言った?」
「ん…ぁ…ぇ…」
「その態度むかつくのよね、不思議ちゃんにでもなってかわい子ぶってる気?」
アリスは何を言われようと暴力では抵抗しない。ただし、暴力以外ではアリスなりに抵抗している。それはその三人を見下すかのような瞳。
所詮ストレス発散でいじめて弱者にしか手を出せない哀れな存在と。いつかアリス自身が自殺した時気づくだろう。自分の罪を、アリスの痛みを、アリスと同じく恐怖に支配されるだろう。罪という意識の恐怖に。だからこそ、未来や天理という仲間ができ、天理の教室という居場所ができてもまだ自殺を完全にあきらめてはいないのである。
三人のいじめっ子に完全に打ち負かされ立つこともままならなくなりようやく三人は満足したのか去っていった。先生に伝えるというのもあった。しかし、そうなると伝えたことがバレたらもっといじめが加速し激しいものとなる。大前提先生に伝える勇気がない以前にアリスは人とのコミュニケーションを取るのが大の苦手だ。そこには先生も含まれている。アリスに相談という選択肢はない。乗れるとしたら天理やさくら、さくらはそこまで強くないため天理くらいだろうか。それでもアリスは抱えてしまう。相談でき、いじめっ子より強い存在がいるにもかかわらず抱えてしまう。それもアリスの性格なのだろう。
アリスはいつも思うのである。もし何もハンデを抱えず生まれてきていたらこの世界の絶望を味わうことなく普通の一人の人間として生活できていたのだろうか、と。
警戒は怠らず、油断せずコンビニでボロボロになりながらも夕食を買いようやく家にたどり着く。
「はぁ…はぁ…」
床に倒れこみ、今後のことについて考える。
「明日…は休みか…昼食と夕食は外出一回のコンビニで…買おう…」
腹を抑えながら日曜日のことも考える。天理曰く日曜日にチェス同好会がある話は事前に聞いていたが今日の話でその隣が将棋同好会であることは知らなかった。場所は初めて聞いた時に教えてもらっている。アリスはチェス、将棋、オセロはそれなりにできるほうだ。今回は将棋同好会を伝って朱音を探る。そして初心者だと油断した朱音に勝利する考えだ。もちろんアリスはこの時朱音の実力を知らない。
「さて朱音、僕を楽しませてもらおうか」
それだけ言うとアリスは気を失ったかのように睡眠についたのである。
アリスと朱音の戦いが始まろうとしている。
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