第2話
「それじゃあ期末テストの答案を返すぞー。」
日本のとある場所にある美山河高等学校3年1組では夏休み前の期末テストの結果が配られようとしていた。
そのクラスの出席番号、阿久津幸也17歳は一番最初に答案用紙を返却され、絶望していた。
返却されたのは世界史の答案。
その点数は21点だった。
「だぁ~……もうマジで暗記とか無理。」
点数を見た俺は机に突っ伏した。
小さいころから記憶力がひどく悪い俺は記憶系の勉強が全くと言っていいほどできなかった。
公式を用いる数学はもちろん、色々な理屈を用いる化学も嫌い。地学も嫌い。英語とかはもってのほか。
唯一まぁまぁな点数なのは国語くらいだ。
とはいえ漢字にはあまり自信がない。
ただ、文章の中から作中の登場人物の感情を読み取るのは得意かもしれない。
「幸也、お前本当記憶系駄目だよな。卒業したら俺たちの事なんて秒で忘れそう。」
俺の隣の席に座るクラスメイトの名倉樹は俺の答案用紙を奪い、点数を見てあきれた溜息を吐きながらなかなかどうしてひどい発言をしてくる。
「はぁ……忘れたくてもお前のことは多分忘れねぇよ!学年一のイケメンさん。」
そういいながら俺は奪われた答案用紙を取り返す。
いくら記憶力が悪いとはいえ印象に深く残ったことは俺だってさすがに忘れない。
毎日誰かしらに告白されてるドラマや漫画で見るようなイケメンヒーロー的この男のことは流石にどれだけ願っても忘れられそうにない。
「とはいうが信じられないな。ってわけでお前俺と同じ大学来いよ。」
「やだよ。お前馬鹿みたいに頭いいじゃん。」
「はいはい、馬鹿はお前な。」
俺とは雲泥の差の成績のよさの名倉が自分の名前を呼ばれ答案用紙を取りに行く。
いつも落ち着いているクールな樹が嫌味ったらしく笑っている。
間違いない、あの答案は高得点と見える。
「見るか?幸也。」
ニヤニヤと笑いながら答案用紙を俺の前にちらつかせてくる嫌味なイケメン。
そんなイケメンから俺は口をとがらせながらあからさまに視線を外した。
「どうせいい点数なの分かってますよーだ。」
我ながら高校生にもなって子供っぽい言い方をしたものだと思う。
だけどそんなふうにふてくされたくなるほどこいつは点数がいいのだ。
「おぅおぅ、ほっぺ膨らませてほんと可愛いな、お前、は。」
可愛いと嫌みったらしく言ってきたイケメン高校生の樹は俺の膨らんだ頬を人差し指で押してくる。
割と力を入れて膨らませていたせいで人差し指で押されたことで口から「ぶっ」という音が出てしまう。
「あ、先生、阿久津君がおならしました!」
「ばっ!してねぇよ!!!」
俺の口から出た音を聞いていた後ろの席の工藤明夫はここぞとばかりに俺をからかおうとひどく恥ずかしい嘘をついてくる。
割とことあるごとに明夫は俺をいじりの対象にしているせいか明夫がいじり、俺が反応するとクラスで笑いが起きる。
誰も俺が本気でおならをしたなんて思ってないのはその反応見たらわかるけどそれでも恥ずかしいものは恥ずかしい。
「大丈夫か?幸也ちゃん。」
「誰のせいだと思ってんだ、馬鹿樹!!」
恥ずかしくて身体を小さくして椅子に座っていると嫌味なイケメンが嫌味な笑顔を浮かべながら訪ねてきてこれまた腹が立つ。
こんな感じで俺の日常は割と普通の高校生の日常と何も変わらなかった。
この日の放課後、彼女と再会するまでは。
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