第2話
会議が終わった後、俺は通常の業務に戻っていた。
普通強い者は前線に立ち敵を殲滅してしまうのが最適だと思うのだが、何故か事務作業をさせられている。
昔、こういうのは頭のいい魔族に任せてしまった方が速いし運営しやすいのではとシキに提案したのだが、団体のトップはこういうものだと前に行かせてくれなかった。
とは言っても少しは威厳を保つためという名目で戦地に赴いているのでストレスが溜まっているというわけではないのだが。
「お疲れ様です。休憩にどうぞ」
「ありがとう。気が利くなってオイ」
珍しく優しいなと思って飲み物をよく見ると、エナジードリンクだった。上司に気軽に渡すものじゃねえだろ。
「魔王様には仕事を頑張っていただかないと」
「はあ……こうなったのも基本的にお前のせいなんだからな?」
今の仕事は基本的に四天王周りの備品や戦闘員に関する書類である。
先日のシキによるありがたい講座によって洗脳されてしまった四天王の方々が張り切っているので、そのしわ寄せがここに来ている。
そして1時間後、どうにか仕事を終えた。
「ご苦労様でした」
「何とか終わったな」
どうにか仕事も無事に終わったので今日はひとまず寝ることにした。
「おはようございます。魔王様」
朝になると、シキが起こしに来てくれていた。
「ありがとう。シキ」
「仕事ですから」
普通に仕事をしているだけならただの有能な美人なんだけどな。
いつも通り朝の支度をして、魔王場の自室で仕事をしていた。
そして昼休みに差し掛かろうとしたところ、部下から報告があった。
「四天王全員からの報告です。各々、第一拠点の村を懐柔し、味方につけることに成功しました。現在第二目標へ向かうとのことです」
早くない!?あれから24時間経ってないよ?
「うむ、ご苦労だったと伝えてくれ」
「はい。それでは失礼いたします」
部下が去ったのを確認したあと、
「シキ、何かしたか?」
「いいえ、何も。あの4人が頑張っただけですよ」
頑張っただけって……それなら今までのあいつらは何だっていうんだよ。
「とりあえずこちら側に近い人間達を引き込めたのは良かったな。シキの予想だとどの目標ラインまでなら味方につけられると踏んでいる?」
「第三目標までですね。それ以降は良くても中立というところでしょう」
「となると、大体二か月くらいはかかりそうだな」
来たる戦争のためにもそろそろ調整しておかないとな。
「報告です!第二第三目標、共に懐柔に成功しました!第四目標は中立になる模様です!」
「早くない!?!?」
なんやかんやも無く、あっさりと戦争の準備が出来てしまったわけであるが。
今回はサラの部隊の補助としてやってきたわけだが。
「いくぞお前ら!魔王様に勝利の瞬間を届けるぞ!」
「おおおお!!!!!!」
「声がちいせえ!!!」
「おおおおおおおお!!!!!!!!!!!」
昔から熱血ではあったのだが、より一層その毛色が強くなっている気がする。
このままいくと部下を根性論で洗脳してしまうんじゃないか。
ブラックだからと辞めていくのも不味いしな。部下の給料位は上げておいてやろう。
その掛け声と共に戦陣を敷き、戦争が始まった。
サラの部隊の特徴として、戦術に関しては弱い代わりに、圧倒的な攻撃力の高さによる素早い制圧力がある。
気が付けば一瞬で正面にある敵陣が焼け野原になっていた。
しかし、全体を殲滅出来たかと言えばそういうわけではなく、横に配置されていた兵士たちが無傷で待ち構えており、本格的な戦闘となった。
数自体は最初の攻撃で有利にはなっていたが、流石に挟み撃ちには弱いようで、次第に劣勢になっていた。
「流石に俺の出番のようだな」
見かねた俺は、戦場の真上に飛び立ち、皆の見える所に立った。
「我が名はエルドラ。魔王である。今回は私の部下を追い詰めたご褒美として、我の本気を見せてやろう」
決まった。けど敵兵さん、弓やがちょくちょく当たっていたいからやめて。あ、痛い!
今度は弓矢が当たっても平気なように硬めの防具を発注しておこう。
「ミクスウィンド!」
まずは接敵していない的に魔法を放つ。
これで敵の分断に成功した。
「とどめだ。ギガスフレイム!」
そして俺は接敵している味方諸共火炎で吹き飛ばした。
「これで終わりか。この程度で我々に敵対しようと考えたのか。浅はかな」
「味方諸共吹き飛ばすなんて、あり得ねえ。こんなんと闘ってられるか!!」
敵は動揺し、一目散に逃げていった。
「ふう。どうにかなったな」
「ありがとう。魔王様」
一息ついていると、サラがやってきた。
この間のスパルタがまだ残っているのか、若干丁寧な口調だ。
「このくらいは当然だよ。魔王なんだから」
「にしても私たち諸共攻撃するなんて思い切ったことしましたね」
一応戦争には勝ったわけだが、その理由は味方諸共攻撃したからだ。
「サラたちの部隊は炎魔法が一切効かないのは報告で分かっていたからな」
サラたちの部隊は高い火力を売りにしているからな。戦争というある程度接近して戦わないといけない以上巻き添えを食らうのは日常茶飯事だ。
つまりそれを想定した部隊が組まれるわけで。
「効かなくても少しは痛いんだけど」
「それは本当にすみません」
それに吹き飛ばしたので吹っ飛びダメージは負うよな。
「とりあえずこれで無事に勝ったかな?」
周囲を見ても、戦う意思のある人間の兵は存在しない。
こちらの勝利でこの戦争は終幕かな。
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