とても優しい魔王様も流石に堪忍袋の緒が切れました。だから世界征服をして自分の身をしっかり守りましょう。
僧侶A
第1話
ここは魔王城。人間の誰しもが恐怖する地に鎮座する、豪華絢爛で贅の限りを尽くした欲望渦巻く場所。
そこに魔族最強とも謳われている四天王が集結していた。
「皆よくぞ集まってくれた。今回集まっていただいたのは他でもない」
「魔王様そんな変な話し方しないで普通に話しな」
「あ、はい」
威厳のある話し方をしようとした私、魔王の言葉を四天王の一人であるサラが遮った。
私に威厳などないようです。サラの突っ込みに対して他の四天王も笑いをこらえていました。
「ということで皆に集まって貰ったのは人間に対する話でね」
「うむ、人間か。それがどうかしたのか?」
まともに聞いて答えてくれたのは同じく四天王の一人ダラス。本当にありがたい。
「流石に私たちに対して酷い仕打ちしすぎじゃないですかね?」
「それは分かりますね。私の管轄下の子たちも狩られたり攫われたりしています……」
悲痛な表情で四天王のディーネが告白する。メイドであるシキの調べによると彼女の管轄が特にひどいらしい。
「というわけでこの世界を征服しようと思っているんだ」
「マジで言ってる?」
サラは流石に驚いたようで、思わず席を立っていた。
「マジです。そのためにメイドのシキさんにある程度調べてもらっています」
俺は後ろで静かにしていたシキに説明をするように促した。シキは一度お辞儀をすると、説明を始めた。
「とりあえずこの魔王が言っていることの訂正からですね。この人大きく見せようと世界を征服するとか言ってますがこの大陸の征服ですね。そんな世界を敵に回すような馬鹿はしません」
相変わらずメイドなのに私への敬意足りてないですよね?どっちかと言えば下に見てますよねこの人?
「ひとまず説明です。最初の攻め先は人間の領土付近にあるあちらの国家とのかかわりが薄い村。大陸の国の共通点として、国の中心に近ければ近いほど、身分が高ければ高いほど、我々魔族を敵視する傾向があります。逆に、城下町から遠く離れた地は味方につく可能性すらあります」
シキはあらかじめ準備してくれていた地図を開いた。
そして四天王は思わず笑った。
「この地図……」
思わず声を出すサラ。
シキ自作の地図なのだが、彼女はどうにも絵が苦手らしいのだ。ちなみに本人に自覚は無い。
「おい、シキが懸命に書いた地図だ。馬鹿にするんじゃない」
笑うサラに対して最後の四天王、フィードが注意した。
しかし、その注意は、フィードもこの地図の出来が良くないことを認めるようなものだった。
それが何を指すかというと。
「あなた方の意識の低さはよく分かりました。徹底的に意識改革をしてあげるとしましょうか」
鬼の授業タイムが始まる。
俺はそれを良く知っていたので四天王達に気が取られているうちに——
「何をしているんです?部下の怠慢は上司の責任ですよ?」
見事に背後を取られ、無事に鬼タイムに突入することになった。
「今回はここまでにしましょう」
約2日に及ぶ鬼教官による指導を受け、体力も限界寸前という所でようやく解放された。
いくら俺たちが人間と比べてかなり丈夫にしても、丸二日睡眠どころか休憩なしってのは生物としての摂理に反していると思うんだ。
ただそれもあってか、四天王はなんか都合のいい感じに洗脳されていた。
「シキ様ありがとうございました!」
一体だれが魔王なんだか。
流石に今の四天王の状態でそのまま会議を続行するのは酷だったので解散となった。
当の本人たちはやる気に満ち溢れており、それでもやりたいと反対はされたのだが。
「魔王様の考えていることは分かりますが多少甘すぎではありませんか?」
「お前が厳しすぎるからだよ」
この日から丸二日後に再び召集をかけた。十分な休養を取って貰えたかと思ったんだがそうではなかった。なんか一回り強くなってた。
「今回の目的は、ひとまず方針を確定させることだ」
四天王たちは熱心な目でこちらを見ている。まるで意識の高いベンチャー企業の社長になった気分だ。正直違和感しかない。忠実すぎるサラとかもう違和感の塊だよ。
「ということで頼んだぞ」
再びシキに任せる。今度は地図を笑うものは誰もいなかった。
「前提の説明は前回済ませたので、本題から言わせていただきます。一番外側にある村を全てこちら側に寝返らせます。そのための方法は各自好きなように行って構いません。ただし、極力武力行使は行わないで下さい。国の中心部まで情報が行き渡ってしまった時点で我々の敗北だと考えてください」
シキはそのまま軽くお辞儀をして後ろへ下がった。
「ということだ。担当する地域は各々の適正に合わせてある。全力を尽くせば必ず、というわけではないが一番高い。後は任せた。では解散だ」
ということで約4日かけて会議は終了した。大体は関係ない時間だったが。
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