科学技術の進んだ世界で肉体を捨てて自由に生きます(仮)

白澤建吾

ミヤタ ショウ

肉体をすてて魔法の世界にいくことにしました

 人が肉体を捨てることが選択肢の一つとして選ぶことが可能になった世界。


 目を失った者がカメラアイと装着し、新たな目を持ち、


 貧弱な人の体に不満があったものは脳をそのままにすべて機械に置き換えた。


 子孫を残せないというデメリットにさえ目を瞑れば思うがままに


 自分の体をいじれるようになった。


 おれは、両親の願いのまま子供も作ったし、足がないことを除けば


 特に不満はなかったがやりたいことは一通りやった。


 そこで現実を生きることに飽きたおれは


 脳の情報をチップに移し、巨大企業の運営する演算装置の一部として生き、


 両親と元妻に仕送りを設定することにした。


 マイニングや薬剤作成シミュレーションなど、様々な演算の一部として


 異世界を生きるおれの余剰処理能力が割り当てられる。


 おれが生きてるだけで周りの人に勝手に送金されるのだ。


 なんとすばらしいことだろう。



 と、いうことで巨大企業ナイルの受付に来たのであった。


 契約手続きは進み、世界選択をすることになった。


 銃や火薬はない世界で、魔法の有無、スキルの有無、


 異世界人として生を受けたのだと思って生まれるか、


 シミュレーターの中だと認識があるまま生まれるか、


 その世界で蘇生するか否か


 死んだ場合の扱い、


 同じ世界で蘇生するか記憶をリセットして別な世界にランダムで移動するか


 都度再契約して好みの世界を移動するか


 消滅としてただの脳チップになり、死と同じ扱いにするか。


 様々な項目にチェックをつけていき、契約を進める。


 レベル制で魔法、スキルがあり、熟練度があり、魔王が定期的に発生する世界で


 シミュレーターだと認識があったほうがおもしろそうだ。


 一応規則が一つだけあり、


 シミュレーター認識のない者にそれを伝えることがタブーで罰則は死刑となる。


 余談だが、脳をチップに移植した瞬間、肉体は企業のものとなり、


 この時、脳はクリアされ、企業が用意した疑似人格をインストールされ


 薬剤投与やストレス負荷実験などの様々な実験に使われる。



 コンクラクション・プレジャー終末の快楽装置と呼ばれる機械のベッドに横たわり、


 エンジニアの指示に従いリラックスすると、


 森林の映像が内側に投影された蓋がゆっくりと閉じた。


 何か言い残すことはありますか?と聞かれたのでビール飲みたいです。というと


 あっちで飲んでください、では始めます。と言われた。


 ちょっと冷たいですね、と不満をいうと


 快感が脳にダイレクトに伝わるのであっちで飲んだほうがおいしいですよ、と


 言われ、ちょっと楽しみになった。


 あっちの世界に入ることはダイブインというらしいが、


 ダイブインしたら最初にキャラクタークリエイトがありますと言われたので、


 わかりました。と答えると目の前が真っ暗になった。


 これで現実世界のおれは死んだのだった。



 真っ暗な部屋にぽつんといると、目の前に美しい姿をした少女が現れた。


 ワンピースのドレスを着てちょっと重そうな杖を持った少女は


「よくいらっしゃいました、わたしがこの世界の女神ヘラと申します。」


「あなたは不慮の事故により亡くなってしまいましたが、こちらの世界で


 魔王の軍勢が現れ人類が絶滅の危機に瀕しています。」


「あなたのお力が必要なのです。」


 ファンタジーのお約束が展開される。


 そもそも事故で死んでいない。


「異世界で生きることに不安があるのはわかります。


 そのため、わたしの力の一端を分け与えましょう。」


 そういうと目の前にウィンドウが表示された。


 スキルを選択してください。残りポイント30と書いてある。


 大魔法使い    -20pt

 上級魔法使い   -15pt

 魔法使い     -10pt


 剣聖       -20pt

 大剣豪      -15pt

 剣豪       -10pt


 拳聖       -20pt

 大拳豪      -15pt

 拳豪       -10pt


 スキルクリエイター-20pt

 スキルマスター  -15pt

 スキルユーザー  -10pt


 生活魔法     -1pt

 生活スキル    -1pt


 振り直しはできますか、と聞くとできません、と言われた。


 ぐむむ、これは難しいな。


 半端にとってもしょうがないだろうから


 花形の大魔法使いとスキルユーザーでいいかな。と思い選択する。


 すると「あなたの元の姿は失われてしまいました、


 この世界で生きる姿を作る必要があります。」と言われる。


 まあ、元の顔でいいか、と確かこんな顔だったと造形する。


「最後にあなたの名前をお教えください。」


「ミヤタ ショウ」


「ありがとう、ショウ、世界をお救いください。」


といってすーっと消えていき、暗転、


まぶしい光に目がくらんだ後に大平原のただ中に置き去りにされていた。

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