第9話 それから……
「日本に降下して後の事ですが、当時の都があった難波へ向かうに都合の良い瀬戸内の小さな無人島を目指しました。それが、この小さな島です。」
俺は、ある種の何とも言えない感慨にふけっていたのだが、ハッタの説明は続いてゆく。
「当艦に防腐処理を済ませた後、海底の地中深くに当艦を埋め、地中エレベーターを作り上陸しました。それが、ご主人様が発見した洞窟にあったエレベーターです。
島に上陸すると通信用のアンテナを設置し、山の木々を利用して難波へ向かう為に船を作りまし。
見かけは、当時の中国にて使用されていた帆船を模していましたが、超音波モーターとフォトンバッテリーを搭載しスクリュー推進の船でした。
一行は完成した船に乗り込むと、当時吉備の国と呼ばれていた土地へ向かいました。そこで『大陸からの渡来人であるが、難波への上陸を許可してほしい』と難波高津宮へ許可を取ってもらおうとかんがえたのです。
しかし、当時その地を支配していた
不快に思われたオティーリエ王女は、レーザーガンにて軍勢撃退を命じました。狼藉者達は、逃げ惑い。『鬼が来た』と恐れたそうです。その後一行は、吉備の国を離れ播磨の国へ向かわれました」
ハッタは、軍勢撃退を命じと言っているが、映像のオティーリエ王女はノリノリでレーザー撃ちまくってるんだけど……。なんか、『ヒャッハー』っ叫んでないかあの王女。
これは少し、話を割り引いて聞いていた方が良いのかな。
「吉備の国でのトラブルを踏まえ、播磨の国では港に接岸する前に偵察ドローンを飛ばして、事前に情報収集することにしました。民などの暮らしぶりを見れば、支配者がどのような人物か測れるというものですから。
しかし、周囲に沢山いるとの理由で烏に似せて作った偵察ドローンが、住人に捉えられたり壊されるという事態が多発しました。
それで一計を案じたオティーリエ王女は、三本足の烏ドローンを制作し偵察に向かわせました」
一計を案じましたって……、あの王女無茶苦茶怒ってんじゃん。言葉は判らないけど雰囲気で判るよ。烏を三本足にするのだって、部下の人がめっちゃ止めてるじゃん。それに……。
「あのぅ、
「恐らく後世の者が、どこかで話を取り違えたか、混じってしまったものと考えられます」
なんだか、途端に話が嘘くさくなったような気がする。いやしかし、ハッタは当時から存在していた訳だし、三本足の烏ドローンも映像に映っている。これは、古事記が間違っているのか?
「オティーリエ王女の策が功を奏し、住人達の無礼な振る舞いも無くなり礼を以って遇され、一行は播磨の国に僅かばかりの時間滞在し、難波へと向かいました」
いや、住人達が『妖魔を引き連れた妖怪の一行だ』って怖がってんじゃん。住人の言葉は、日本語だから俺にも判るよ。
「難波高津宮へ到着した一行は、当時の天皇家に温かく迎えられました。文明の格差からくる生活の差異に悩まされたそうですが、次第に溶け込んでいき心穏やかに暮らしていたそうです。
そうして穏やかに暮らしていると
これからの生活の事を考慮し、これをオティーリエ王女は受け入れ、以後は
その話が時の帝、後に仁徳天皇と呼ばれるお方に届き、興味を抱かれました。しかし、皇后が大変に嫉妬深い性格であった為、
その後、皇后が他界されると帝は、
帝との生活は仲睦まじく幸せなものでしたが、外見は似ているとは言えシュクヴォル王国人と日本人では遺伝子差異によって子を成す事が出来ません。その為に
遺伝子改変薬とは、異なる星の出身者同士が子を成すために用いる薬で、銀河中央に於いては広く使用される薬です。それぞれの星の人種に合わせて調整が必要ですが、投薬すると二つの星の人種の中間の存在になります。
そして子の世代では、言わばハイブリット的な存在となり、両国人との間に何の問題も無く子を成す事が可能となのます。
伴侶である帝にも投薬する必要があったのですが、副効果としてシュクヴォル王国人に近い寿命を得ると説明したところ、良く理解していなかったようですが寿命が延びると喜んで投薬しました。
当時のシュクヴォル王国人の寿命は200年程、一方日本人は良くて35年程でしたからとても喜んでいました。事実、仁徳天皇は100年を超え生き続け、当時としては驚異の長寿となりました。
そして帝と
そこまで語るとハッタは、映像が流れているもう一つのスクリーンを見た。
そこには左前の上着に腰を縛る帯、長いスカートを履き、玉で出来たネックレスを身に着けた女性が赤子を抱いて、高台にあるであろう建物の中から紅葉している外を眺めていた。
「殿下、何を眺めておいでで」
はっきりとした日本語で、男性の声がしたが姿は見えない。恐らくは、この映像を撮影している人物であろう。でも、日本語?
「ああ、大和は国のまほろば……か。ようも的確に表したものよ。本当に大和は美しい」
こちらも流暢な日本語だ。この声は、さっき『ヒャハー』と叫んでいた声と同じに聞こえる、オティーリエ王女ご本人なんだろうな。
オティーリエ王女も赤ん坊も幸せそうな顔をしている。その表情や姿は、何だか俺をホッとさせた。もう、この頃には、日本語も話せるようになったみたいだな。
はっ、そういえばハッタも日本語話してる。自然過ぎて、疑問に思わなかったよ。
そんなこんなで俺は、オティーリエ王女の日本での幸せそうな暮らしぶりを知った。
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