姫君の影武者

御鏡 鏡

第一部 『招待状』編 ギルディアスからの招待

第一章 招待状の件

第1話 ギルディアスという名の国からの招待状と招請状

 はるか遠くに見えているのがギルディアス国の主都、ギルドシティーだった。


 とても大きな都市でその辺の大都市(この場合の大都市とは大きな国の主都にあたるもの)が十数個は入るであろうというサイズであった、上空から見るとそれがよくわかるのである。


 ギルドシティーのグラウンド・コントロールの指示に従って飛ぶ、大型艦船とはいえL(ラージ〔大型〕)-FPTライングワーランスポーター〔飛行艦艇〕)-TMSランスポートザーップ〔輸送母艦〕)型一隻では足りなかったか? そう思わせる規模の大都市であり空港でもあった。


(ラージ-フライングパワートランスポーター〔略称:L-FPT〕大型空中艦艇[Large-Flying Power Transporter]全長:千三百メートルから千五百メートル未満のものをいう)




 とはいえ私が用意できるものは、ほとんど無かったのだ。


 こちらから指示や指揮は出せるが、機体や資材・補給物資を出すのは国元なのだ。



 特に今回のギルドからの招待しょうたいは少々変わっていて、ギルドの最高権力者ヨナ様から直々の肉筆で書かれた手紙で、私あてとなっていたからである。


 簡潔に書くと、クアドロプル・デザイナーとしての知識を貸してほしいというものだった。


 デザイナー(設計者)そのものはギルドにはかなりの数が居るはずであった。


 なぜ私に? ギルディアスの首都圏ギルドシティーに、特にギルドに所属するデザイナーが少ないなんて話は聞いたこともなかったからである。


 クアドロプル・デザイナーそのものは探さないと見つからないが……。



 あと、それと共にナイツ騎士としても招請しょうせい状が来ていた。


 こちらはヨナ様からでは無かったが、ギルド最高評議長の印が押されていた。



 よって持ってきたものはM・Mエム・エム五個中隊と千名規模の四個中隊編成の人員とマジック・マシン(魔導機)一機、Xエックスクラス私の姫機ひめきファランクスFXと、四十七機のマジック・モーティブ(魔動機)B+ビープラス級、四十七機分輸送形態トランスポーテーション・フォーム旗機はたきサイファード(近衛このえ種、三十九機と王族警護ロイヤルガード種、八機)のみではあった。


M・Mエム・エムとは、マジック・マシン又はマジック・モーティブと呼ばれる。冠がM・Mであるため、愛称としてエム・エムと呼ばれていたりする。頭頂高二十メートル標準の、究極戦闘魔導式機械兵器である。形状は騎士型が一番多く、次いで鎧武者型、軍事型等と、多岐にわたるバリエーションが魅力の究極の戦闘機械である。軍用機であり、軍や騎士団によって運用されるが、個人保有機がまったく無いわけではない。)


(魔導機と魔動機の違い、魔導機は魔法の減衰なく百パーセント魔法を行使できるように設計されているのに対し魔動機は魔法を使うように設計時点で設定されていないため魔法減衰がかかり効果は二十五パーセント程度まで落ちるのだ)


(フラッグ・マシン、旗機はたき:その国を代表する機体である。/国印ナショナル・シールになる機体の意味ではない。姫機のほうが国印になると思われる)


 現在、この国で出せる最大編成マキシマム・フォーメーション(ギリギリ一個大隊)ということになるのだろうか? 少なくとも連隊規模の編成や師団規模の編成ではないのは確かだ。


 起きていることにもよるが、内容も書かれてはいなかったのであった。


 それに、ナイツの側の招請状に出兵する軍団の規模は書いていなかった。


 つまりこの国が、ギルディアスに試されている証拠でもあるといえたのである。


 東国とうごく四大国家の斑鳩いかるが国の御三家ごさんけ(代表的な三つの家柄を敬っていう名称)の中でも小国にあたいする、スクーデリア皇国をギルディアスが試している。


 少なくとも私は、そう思った。


 今私たちの国が現在出せるのはこれくらいだ! というのを示せと言われているような気がしたのである。


 旗機サイファードは、国元でも改良が進んでいるB+級の旗機である。


 小国であるがゆえの少数精鋭を目指し、創られたものであった。


 そして、その改良には私も加わっていた。


 そこに私宛に招待状と招請状が来たのである。



 国元の城の整備員の皆は行ってきてください、活躍をご期待申し上げます。


 と口々にいってくれてはいるので改良現場を離れることによる心苦しさもあったが、招待されているので無視するわけにもいかず、それを受けることにしたというわけである。


 今回は皆に内緒ないしょで行くわけではない、見送られてあとにするのだ。


 残るのはまだ幼いニューレース新人族ノーマル普通種の私から見れば妹に当たる姉妹とニューレース・メイジ魔法使い種ではあるがまだ幼く何かの判別もあまりできていない状態の赤子、私から見れば弟に当たる者である。


 王様いや父上様と呼ぶべきか? お后様いや母上様と呼ぶべきか? と迷っているうちに空港を出てしまっていた。


 しくじったと思ったが顔に出すわけにもいかず、笑顔で手を振るしかなかった。


 王様もお后様もこたびの件は知っているはずではあったが、笑顔で見送ってくださっていた。


 私としては苦い経験ではあるが、笑顔で手を振らなければならなかったのである。


 王様はコモンレース人族ナイツ騎士種、お后様はニューレース・ノーマルである。


 かくいう私はニューレース・ナイツであった。つまりお二人の血を引いているといえるのではあるが、影武者カゲとして雇われた身についてはこたびの件を話さねばなるまい。


 だが、こたびの件はいずれ話すとして、まずは今回の話をしよう。

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