同僚以上恋人未満

@hanamima

第1話 新入社員

新入社員なんて何年ぶりだろう。


中小企業ではよくある「後輩が年上」っていう

なんとも微妙な関係にも

この会社の人達はすんなり馴染み、受け入れる。


そして、女性社員に優しくしてくれるのも

男性が多い中小企業の良い所だと思う。



30人いる社員の中で、女性社員は全8名。


私、上野綾菜は営業部所属。

29歳。独身。彼氏なし。

営業部は最年長のかよ姉と

天然キレイ系の小鳥さん

そして、私。


小さな事務所にはもうひとつ、経理課。

お局こと経理課の課長は私とかよ姉を散々いじめてきた社内の嫌われ者。自業自得。


今は訳あって時短勤務をしていて、

滅多に話すことはないのでとっても平和。



「おはようございます!」


「上野ちゃん、おはよ。」


「かよ姉、おはよー」


かよ姐、御歳55歳。

でも全然そうは見えない美魔女である。

ジムやマラソンにも参加するアクティブ派。

オシャレや美容、グルメまでアンテナを張って

私の憧れでもある。

年齢差は20近いのだが

私ととても気が合う上に、同期で

お局のことが嫌いという共通点もあり

大の仲良しである。


「新入社員、見た?」

「いや、まだ会ってないの。どんな人?」

「私もまだ!今回は社長のツテでの入社だし、

面接もいつの間にか終わってたもんね。」

「いい人だといいねー」

「私は若いイケメンがいい!」

「もー、かよ姉はホントに…」



営業部とはいえ、デスクにずっといるわけではない。

特に私は、頻繁に現場や管理課へ行き、

書類を渡したり打ち合わせしたり

多方面と関連する業務が多い。


「おはようございますー!」

「あ!上野ちゃん!今日の新人さん見た?」

管理課課長の橋口さんがウキウキしている。


「ふふ。まだ見てないです。どうでした?」

「いや、私も見てない!」


「仕事できる人だといいなー!」

「そうですね」


橋口さんはシングルマザーでもある。

息子さんはすでに成人していて

母親業と仕事を両立してきた女性として

私は橋口さんをとても尊敬している。


それにしても、姿を見せない新人さんは

どんな人なんだろう。


一緒に仕事をしていくなら、

会話が続く人がいい。


若くてイケメンでなくても、

仕事ができなくても、

コミュニケーションをしっかりとれるような


そんな人ならいいな。

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