第2話 震える土、蠢く岩達2
「生物兵器の除去 ?」
「そうだ。君達にやってもらいたい」
黒髪で、渋くて頑固そうなおっさんは渋い声がドアごしから聞こえた。
このおっさんは私の伯父で、大介おじさん。母さんの義弟で、うちの係長。
見た通りの堅物で時代遅れの性格。
いい年して、独身貴族だとか言って結婚する気なし。
本当はもてないのでは?と私は思いつつ、係長のオフィスのドアの前に居た。
コン コン
「失礼します」
ドアを開けると、クリーム色のスーツを着ているお姉ちゃんの姿があった。
私のお姉ちゃんの名前はウェザリュウス。ウチの課長。容姿端麗で才色兼備。
それに加えて、バリバリのキャリアウーマン。私の憧れで自慢のお姉ちゃん。
長くてきれいな茶髪とメガネが チャームポイント。何、話しってんだろ?
「おお、良い所に来た。君にも話を聞いてもらおう」
大介おじさんのの隣にいる子は誰だろう?銀髪で中性的な子供みたい。
年は中学生ぐらいで可愛らしい少年か少女だと思うけど、
それに反して顔がどこか暗くて不気味な感じがする。
でも、なんで子供が居るんだろう?もしかして、おじさんの隠し子!?
そうするとお姉ちゃんが居るってことは結婚!?
でも、たしか血縁の近い人とはできないはずじゃ…。
お姉ちゃんから、何も聞いてないよー。
「はい」
私は状況がよくわからず、持って来たお茶をみんなにくばり、
言われるがままにお姉ちゃんの隣のソファーに座った。
「さっきの話の続きだが、君達はこの子と一緒に調査に行ってもらいたい。
その島である生物兵器の実験の最中に生物兵器が突然変異を起こし、
すべての物質を侵食し始めた。このままでは島中に広がりかねない」
「そんなの私達に関係ないことじゃない!そんなの実験した人達の責任でしょ。
その人達が処理するなりなんなりすればいいでしょ」
「確かに彼等の責任を取るべきことで、我々には関係ない。
しかし、神々の力が宿った“ソウルブラッド”や“神機”を使わなければ、
この現象は不可能に近い」
「だから、私達に調査しろと?」
「それに今はあの島ですんでいるかもしれないが、
近い将来に我々の所まで来る可能性は否定できない。
だから、生物兵器の突然変異の原因を調査して、
“ソウルブラッド”と“神機”の場合は生物兵器を破壊しろ。
そして、可能の範囲でそれらを回収を行い、だめなら破壊しろ。
それ以外は好きしていい」
「じゃ、“ソウルブラッド”や“神機”でない場合は好きにしていいのね?」
「ああ、好きにしてくれ。バカンスや妹のアレを探してもいい」
私達の妹は前の大きな戦争時に体の半身近くを吹っ飛んだらしく、
今も意識不明の重体で生きているのが不思議なくらい傷がひどかった。
しかも時々、どこかの国の争いがあると急に苦しみ出すみたい。
医者の話では原因不明で、
吹っ飛んだ妹の体の一部が何らかの関係がある可能性が高いんだって。
「僕も好きにしていいのかな?その場合は僕一人でやるつもりだから」
男とも女とも取れる声でボーイッシュの子供はおじさんに尋ねた。
「この現象はとても珍しいケースだね。科学者の一人しては非常に興味深い。
こう見えても、僕はこの手のスペシャリストなんだ。
できれば、このサンプルがほしい」
「まあ、それはかまいませんが……」
少し驚いた様子でおじさんは答えた。
「それは危険すぎるわよ。
貴方の力がどの程度か知らないけど、
万が一あの大虐殺を招いた“ソウルブラッド”だったら、
私のお母様クラスの力でもない限り、無理よ」
「だって、お母さんは国でも五本の指に入るくらいだからねぇ。
それにお母さんなら、どんな困難や死地をくぐり抜けるスーパーウーマンなのよ」
どんな“ソウルブラッド”や“神機”でも、
楽勝でちょっとした大きな島を吹っ飛ばすくらいの力がある。
最低でも軍の一個師団と同等か、
それ以上の力がない限りは対処するのは難しいの。
だからもー、素人の考えで物を言うのやめてよー。
「姉貴、いや専務は別件の謎の精神病の調査をしている最中だ。
ちょうど、君達しか居なくてね」
「じゃ、お母様の調査終了を待てばいいじゃないの」
私達は伯父さんを睨みつけるように見た。
「お母様ではなく、専務だ。いい加減に公私混同するのはやめないか。
それに業務命令だ。私個人の意見だが、専務の調査に関係している気がする。
君達も我々の仕事を忘れたわけでもあるまい」
「“時空視察公社”では時間の中にある全ての出来事を調査・解析し、
あるがままを記録する。
その結果、“ソウルブラッド”や“神機”に関すること、
我々の仕事の障害である場合は時間に悪影響を与えかねないので、
速やかに排除する」
「その可能性がある以上、調査・解析するの筋だ。
君達だって、国でも屈指の実力者ではないか。
それにこの仕事終了後、短期間の出国許可証が降りるように上と掛け合ってある」
「やったあ!!伯父さん、ありがとう!!!」
「それじゃあ、国外へ行ってもいいのね?」
「僕にも感謝してほしいね」
「もしかして、貴方は結構なVIPなのかしら?」
私の国では、前の戦争後から基本的に出入国は禁止である。
何でも、感染病の侵入や武器などの密輸を防止するなどと言われている。
例外としては条件付きで、
ある程度の身分の高い人が外国の査察などの仕事等に限られている。
「それは秘密だね」
この子、何者だろう?話の流れから、隠し子の線はないかなー。
よく見ると軍服を着ているから、軍の関係者かなー。
「まあ、いいわ。個人的に動くなら、自己責任の上で行動して頂戴。
係長の話からするとかなり危険な可能性が高い仕事よ。
もし、“ソウルブラッド”の場合は自分の身は自分で守ってね。それが条件だわ」
「その場合、私達も自分のことで精一杯だから」
「問題無いね」
少女は無知なのか余裕なのか判らないが、あっさりと答える。
「どうやら、話がまとまったようだな。
出発は三日後になる。それまでに旅の支度をしてくれ」
よーし、かんばるぞー!!
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