第17話 同じ世界線
オークションが始まる。
ここは裏なので素性がわからない様に皆が仮面を付ける。声も出してはいけない、プラカードが渡れた。商品が欲しい時に上げる。最後に残った者が商品を手に入れる事が出来る。色々な物が出品されていた。ここでは人身売買も当然の様に行われていた‥‥‥最後になった。
幕が上がる。檻の中震える少女の髪は黒い。グレンはリッキーの顔を見る、頷くリッキー彼女だ。プラカードが一斉に上がる値段もどんどん上がって行く。
プラカードは値段が上がると共に下がっていく、結局最後までプラカードが残ったのはグレンだった。
グレンが別室に連れていかれたリッキーが心配そうにする。
「大丈夫よ、グレンの素性を知ってきっとあちらが驚いているわ」
ふふっとミアが笑う。車で待っていると布を被った少女が隠されるように出て来る、グレンも一緒だ。車に乗る。主催者だろう人がずっと頭を下げて見送る。
「もう大丈夫だ。怖かったよな……すまない……」
リッキーが言う。
「リッキーなの? どうしたの! その髪! ウィッグ?」
桜がリッキーも髪を引っ張る。
「いてー! 引っ張るなよ、本物だ! そこの仲間の人に変えてもらった」
「この世界線の人は力は使えないのよね。じゃあ‥‥‥その人も私達と同じって事」
「そうだよ。日本人さ……俺達、元の世界線に帰れるんだ……」
リッキーが声を詰まられる。
「さあ、皆が待っている。帰ろう」
グレン達が帰って来た。
マンションの中は賑やかになる。それぞれが自己紹介をする。そして“らん”の花の話しになる。
「その花が咲けば、帰れるのね」
桜が聞く。
「そうやってきたが、いつ咲くのか解らない。ミアの勘だけが頼りって事だから、それまでゆっくりするといい。今まで大変な思いをしたのだから」
グレンは言う。
「髪の色は僕が変える。出る時に言って、長くは持たないからそこは勘弁して」
と僕が言うと、そこでミアが二人に言う。
「二人共髪を切りましょう。桜……随分痛んでいるわ」
「ミアは美容師なんだ。だから、任せるといい」
そう行って二人は髪を切ってもらう。ニックが先にその後に桜だ。すると、桜が泣き始める。
「美容院なんて行けてなかったから……うれしい」
女の子だからな。髪を切った時だって本当は切りたくなかったのだろう……。ニックもワックスを塗って髪をツンツンにさせて楽しんでいる。
「俺、セントラルパークで走ってくる! ようじ、頼む!」
いい笑顔だ。思いっきり走っておいで、夕日に染まるセントラルパークも綺麗だからね。沢山の人がジョギングをしている。この世界もそこは、前の世界線と同じ光景だ。
僕は、桜子と日本語で話しをした。
「久しぶりだよ。日本語で話せるなんて……嬉しいなあ。桜は日本では高校は何処だったの?」
「吉祥寺の高校です」
「僕の家は武蔵野だから近いね、よく吉祥寺で遊んだなあ」
「‥‥‥‥‥‥」
何故だろう話しが続かない。
「えーっとようじは大学生だったの?」
「そうだね……でも単位とれてないから、上がれないや」
どうしよう、女の子と何を話せばいいんだ? 困った……。
「私は帰るわね。今日は疲れたから。じゃあね! ようじ、また来るわ。桜もまたね」
とエレンはそう言って帰ってしまった。グレンは
「俺も今日の事で政府に連絡しないと、人身売買なんか許せないからな」
と言って出てしまう、ミアは
「ご飯! 準備しないと!」
と立ち上がる。二人になってしまった‥‥‥えっと‥‥‥。
「ニックとは同級生なんだよね。そういえばニックにこの髪型、侍って言われたよ。歴史は僕がいた世界線と余り変わらないみたいだね。前にもいたんだ日本人、帰ったけど…彼の世界線ではリニアが走っていたから驚いたよ」
「リニアが走っている! 私がいた世界線でもまだよ……」
それから、桜と歴史の話をした。なんて事だ、まさか‥‥‥同じ?
「私達、同じ世界線? って事!」
そこで、ニックが帰ってきた。
「はあーっ!! 気持ちいいなあ! 人の目を気にしなくていいって最高だ? どうした二人共変な顔して」
「ニック! 僕達は同じ世界線だよ!」
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