第10話 保護施設

 目が覚めた。ここは? 目の前に豪華なテーブルとソファーが見える。僕は捕まってしまったよね、ここからの計画は聞いていない。グレンが俺に任せろ! と言うので信じたが‥‥‥。


「目が覚めたか?」


この声は気を失う前に聞いた声だ。


「まだ寝ぼけているのか」


 起き上がり声の主を見る。軍服のような服を着た初老の男性がいた。これまた豪華な椅子に座り何か仕事をしているようだった


「僕はどうなるのですか?」

 恐る恐る聞いてみた……。


「何もせんよ」

 えっ? どういう事、捕まったよね、僕……


「俺は政府に雇われてはいるが犬じゃない」


 ……?


「もうすぐ、グレンが迎えに来るから待ってろ」


 グレンが迎えに来る? その時ドアがノックされ見慣れた顔が入って来る。


「やあ! ジャン元気かい? ミアが心配していたよ。あの人エイジングケアとかしないから、早く死んじゃうわって」


 ああ…いつもの顔だ……。


「あんなものに興味はない、延命にもだ……この体もそう長くは持つまい」

 そう言うと僕を見て、


「そこの坊主を連れて行ってくれ。後、ミアに愛してると伝えてくれ」


 顔から想像できない言葉が出る。


なんだ? 仲良しじゃん! 僕の手を引いて歩きだすグレン。なんか段々腹が立ってきた。なんだよ!




「良く解るように説明してくれない?」


ふらついているが、何とか歩ける。


「ああでもしないと、あつしは帰らなかっただろう」


 確かに……あいつの事だ最後まで付き合うとか言いそうだよな。


「でも、騙す様な事をしなくてもいいじゃないか!」


「騙してなんかいないさ。言っただろ? 俺はそこそこ偉いんだって」


 何か腑に落ちないが、来訪者を帰せたようでよかった。車に乗る。


「何故、瞬間移動出来る来訪者がミアだけなのか解るかい?この力は厄介だ。拘束出来ない……だからその力がある来訪者は殺される」


‥‥‥なんて酷い……命を奪うなんて……


「毛色の違った物、珍しい物を欲しがるのは金持ちの道楽だ。だからと言って『来訪者』人を傷つけていい訳はない」


 正論だ‥‥‥。


「政府にはミアだけが必要なんだ」


 オリジナルだっけ?そう言っていたのを思い出す、家に着いた。


「お帰りなさい」

 笑顔でミアが出迎えてくれた。


「今回の事でミアには無理させたからな。ジャンの奴、機嫌悪かったぞ。後から顔でも見せてやれよ」


 ミアは横を向き、


「ダメよ、リモート出てくれないもの‥‥‥話もしなくなって随分経つわ。私達は監視されている、盗聴だってされている」


 ミアが泣きそうな顔で言う。それを見たグレンは、やれやれと首を振り


「誰が好き好んで恋人同士の会話なんか聞くかよ……全くお前達は」


 ふうと溜め息をついた後

「ようじ、ジャンは何処に居る?」


 僕に聞く。


「さっきの部屋にいるよ」


「少し位なら、怪しまれないように妨害電波を出してやる。行って来いよ」


「5分だ」


 そう言うと部屋に入って行く。少し経ってミアが指を鳴らす、姿が消える。今彼と会ってるのだろう。どうやって妨害電波を出しているのか気になって、グレンの部屋に入る。


 そこには、首に何かを巻いて苦しそうにしているグレンの姿があった。僕が入ってきた事にも気づいていない、しばらくするとミアが現れた。


「私達の為に、こんな危険な事をしなくてもいいのに……」

 首に巻かれたそれを外す。


「早かったじゃないか、ちゃんと話せたか?」


 まだ苦しそうだ。


「ええ、でも、もう来るなって言われたわ」


「あいつらしい」


 リビングの椅子に座り、一息つくと。


「今回の事で、ようじの存在が証明されたようなものだ。ミア、君はこの世界線にとって大切な人物だ。だから、政府にとってようじの存在は脅威そのものだ」


「その内、招待状が届くだろうさ」


 翌日、厳つい制服を着た人物が家に来てグレンに何か渡した。


「仕事が早いな。もう来たか、政府からだよ……お呼びだ」

 と手紙の様な物をひらひらさせて言う。


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