パラレルワールド
@sakura37
第1話 ここは何処だ
自分に今見えている景色は、沢山の星が輝いている夜空と、自分の頬を撫でる白く光る花びらだけ。
何処だここは? 何故ここに居る? 頬を撫でている花を見て、自分がその場所に寝ているのだと気づく。はあ……何も思い出せない……これは、記憶喪失というものなのだろうか。
どうする……このままここに居ても何も思い出せそうにない……身体を起こして座ってみる。見渡して見てもやっぱり分からない…
立ち上がってみる。ここは森の中か? 足元には、先ほど頬を撫でていた白い花が一面に咲いていた。月灯に照らされてキラキラと光っている。そこは広い草原の様な場所だった。
大きく深呼吸をして歩き始める。誰か居ないか……何処かに家は無いか? こんな森に家があるのか? だが、暗闇の中一人でいるのは不安だ歩き続ける。どれだけ歩いたのか分からない。すると、家の灯が見えてきた良かった。やっと誰かに会える! 人が居るのだろうか……
家の前に着いた。ドアを叩こうとして、
暫くドアの前で考え手を握りしめて
その男性に言う。
「あの……すみません……道に迷ってしまって……」
「どうしたの?」
奥から女性の声がした。男性は、その奥にいるだろう女性に向かって言う。
「道に迷ったんだとさ」
「まあそれは大変、中に入って」
いいのか? そんなに簡単に家に入れて……こっちが驚く。だが、困っているのは確かだ。中に入ろうそして、ここが何処か聞こう。
「ありがとうございます」
そう言って家の中に入る。一応礼は言っておこう。
「こんな夜に小さな女の子が出歩く時間じゃないな」
とその男性が言う。そうか背が高いと思ったのは自分が小さいからか……と、今気づく……家の中に入ると2人が驚く顔をする?
「君は! そうか……逃げて来たのか? それとも……まあいい早く家の中に入りなさい」
と男性は外を確認して、ドアを閉める。
「あの、ここは……」
と言いかけてグ~っと腹が鳴る……。
「お腹が空いているのね。こっちへいらっしゃい」
と、女性に手招きされて奥へ行く。テーブルまで来ると椅子を引いてくれた。座っていいのかな? 女性の顔を見る、座っていいみたいだ……すると、食事を用意してくれた。いいのか食べて? 疑問や心配はある、だが空腹には勝てない……腹が減っている食べよう! 無心に食べている自分を見て、
「ほお……これは……」
男性が唸る。凄く見られている……。おっと全部食べてしまった……大丈夫かな? 若干不安はあるが空腹には勝てなかった。
「珍しいなあ、黒髪かあ」
と、今度はじっと目を見つめる……いや、その……近い近い……少し焦る……。
「君は瞳も黒いんだね。美しい。初めて見たよ」
ん? 珍しい? 初めて?
「珍しいんですか?」
「何だ? 知らない訳はないよな? ……でも……本当に……解っていない…のか」
「解らないんです。自分が何者か……それに……何故ここにいるのかも……」
てか、これってヤバくないか? 珍しいって言っていたが‥‥‥。
「そうか『来訪者』か。やっぱりここで合っていたな」
男性は、女性と顔を合わせて頷く。そんな二人に話してみた。
「気がついたら、白い花が沢山咲いている場所に居て‥‥‥でも何も覚えていなくて……」
「白い花?」
「はい」
「その花は、キラキラ光っていなかったかい?」
こくりと頷き、
「はい。月灯に照らされて綺麗に光っていました」
その話を聞いて男性は難しい顔をする。
「それは、きっと“らん”と言う名前の花だろう。でもよくその場所から出て来られたね。あの花の周りには結界が出来るんだ。だから見た者はいない。幻の花と言われていたが……本当に存在したのか……なんにせよ、先に見つける事が出来て良かったよ」
何の事を話しているんだ? あの花には何か秘密でもある様な言い方だが。
「まあ今日は遅い、ここで泊まっていくといい。詳しい話は明日しよう。君も疲れただろう?」
確かに疲れている。今凄い睡魔に襲われている……だが……大丈夫か? 寝ている間に何かされたりしないか? さっき珍しいって言っていた……。
「そんなに怖い顔をしないでくれ可愛い顔が台無しになる。警戒しなくてもいいよ。誰かに売ったりなんかしないからさ」
はは……冗談でも止めてくれ……食事に何も入っていないよな……つい、空腹に勝てなくて食べてしまったが……後悔しても遅いな……。
「大丈夫よ、食事に何も入れたりしてないから‥‥‥」
ふふっと女性が笑う。その笑顔は信じていいのか? ダメだ……凄く眠い……何かあったら、その時はその時だ。……睡魔にも勝てない‥‥‥。
「こっちにベッドがあるから、どうぞこの部屋を使って」
そう案内されて倒れ込むようにベッドに入って寝てしまった‥‥‥。
※ ※ ※ ※ ※
いい匂いがする。卵が焼ける匂いだ……はっと飛び上がるように起きる! 自分はあのまま眠ってしまったのか……何も起きていない……という事は大丈夫なのか? そこから匂いに誘われるように部屋を出た。出て来たのが分かると、女性がこちらを見て、
「起きたのね。朝の食事の用意が出来ているから、一緒に食べましょう?」
と、笑顔で言われた親切な人で良かった……のか?
「なんだあ? まだ疑っているのか? 眉間にシワが寄っているぞ」
と、男性が真似をする……そんな顔しているのか? まあ……夜何もなかったんだ。ここは、この二人を信じよう。そのままテーブルに座る。
「そうそう、俺達は怖くないよー」
と笑顔を向ける。テーブルに目をやると、スクランブルエッグにベーコン、野菜サラダもある。それに、スープ、美味しそうだ。
「なっ? 大丈夫だろう? 美味そうだ! さあ、食べよう」
結局三人で朝食を食べた。美味しい! 昨日は緊張と不安でよく解らなかったが、この女性金髪で瞳はブルーなかなか美しい……自分のタイプだ……ん? なんだこの違和感は? 変な感情を覚えたが、そのまま食事を続けた。食べながらもう一人の男性を見る。この人も金髪かあ~瞳もブルーなんだ同じなんだな。うん、なかなかのイケメンじゃないか……おい! 何を考えている! と食べながら自分に突っ込む。それよりここは何処なのか聞いた方が良くないか? 思い切って聞いてみよう。何か分かるかも知れない。
「貴方の名前は?」
と女性から聞かれた。先を越されてしまった。
「昨日も話した様に何も覚えていないんです……自分の名前も」
「そうか、まあそう固くなるな。よくある事だろう」
と男性が言う。よくある? 事なのか……よく分からんやつだ。
「その髪の色は珍しいからな、欲しがる奴は多いだろう。だから、逃げて来たのじゃないのかと思ったんだが……違うみたいだな‥‥‥もう一つの方か……」
言っている意味がよく解らないんだが……この髪はそんなに珍しいのか? そもそも、何も解らないし、記憶がないんだよ! って言っているのにどうしたもんか。
「よし! 食べたら街に行こう。何か思い出すかも知れない」
と提案された。断る理由はない! 行ってみよう記憶を取り戻さないと! 街へ行けば何か思い出せるかも‥‥‥。
「自己紹介がまだだったな。俺はグレンだ、彼女はミア、宜しく」
と、イケメンが笑顔で自分を見る。悪意はなさそうだ……何故だろう……相手の感情が分かる……女性の方からは……悲しい感情が流れてくる……ここは、聞かない方がいい気がする。
食事が終わり着替える。サイズがピッタリだ。可笑しい、ここに来てから子供の姿は見ていない。
「服のサイズは大丈夫みたいね。ごめんなさい女の子に男の子の服なんて……その服は亡くなった息子の物なの」
「そんな……自分が着てしまっていいんですか」
「いいのよ。着てちょうだい」
悲しい笑顔だ……この人から悲しみの感情が伝わって来る。そうか……この感情は、そういう事か。
「髪の色は目立つからなあ。そうだ! 俺の帽子を貸そう深く被れば隠れる。服もパーカーだから襟元もカバー出来る」
支度を終えグレンと車で街まで行く。
街には沢山の店がある。人も沢山いる。
「はぐれない様に手を繋ごう」
グレンの服の裾を握っていた手を優しく握ってくれた。人混みに慣れた所で顔を上げて周りをよく見て見る……何処かで見た事がある街並みだ? 見覚えがある……どこだっけ? んー……思い出せん! それより……気になったのは、人々の髪が皆金髪なのだ。驚きと共に先ほどのグレンの話を思い出しパーカーの首元をグッと掴んだ。
歩きながら考える……ここは何処だ? グレンは幾つか買い物をしていた。
「ここでお茶にしよう。疲れただろう? 少し休もう」
荷物を置き、ウエイトレスにグレンが何かを注文していた。暫くすると注文した飲み物が来た。考えながら出された飲み物を飲んだ。肌寒いこんな日はこんな温かい飲み物が嬉しいな、これはココアだ。ほっとする。そして、少し先に目をやると……その目に映るそれは……エトワール凱旋門! そして、この通りは‥‥‥まさか!? サンジェリゼ…通り……。
「パリ‥‥‥」
何故言葉が解る? フランス語なんて知らない。
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