30代独身が転生したらなぜかチヤホヤされるようになった件
もち
第1話 プロローグ
新卒で大手企業に入社してもうすぐ30。この年になればそこそこ出世もするもので。全てを仕事に捧げてきた結果、彼女はいないければ趣味もない寂しい男の完成だ。
同期はみんな結婚して幸せで忙しそうで、誰も飲みに行ってくれなくなった。このまま独身は嫌だと思って婚活を始めてみた。しかし趣味のない俺は話が続かず惨敗続きだ。
惨敗の悲しさを紛らわすために、仕事に没頭したら残業が続いた。そのせいで疲れた結果、婚活所にも通えなくなっている。でもいつかまた通えるようになった時をみこして、女性の心を掴むために乙女ゲームというものを始めた。
これが結構おもしろかった。
日々誰かに愛されることを望んでいるからか、俺にはよく刺さった。
仕事はちょっとした失敗から罵倒されても誰も慰めてくれない。そんな俺にとって、乙女ゲームの世界は羨ましいものでしかない。ちょっと努力したらお釣りが出るくらい愛されてるからな。おまけにハッピーエンドが約束されている。
寂しい、辛い、誰でもいいから俺を愛して欲しい、チヤホヤされたい。
そんな気持ちを抱えながら、ぼんやり帰り道を歩いていると―――ダンプが突っ込んできた。。
「大丈夫ですか!」
痛いし大丈夫じゃない。助けて。
「もうすぐ救急車きますからしっかり!」
もうすぐってどのくらいだ?早く痛みを取ってくれ。
そう答えたいのに声は出てくれない。指先ですら動かない。何が起こっているのかは分からないが、身体が冷たくなっていくことだけは分かる。寒い。
このまま俺、死ぬのかな。嫌だなぁ…俺、まだ誰にも……愛されてないのに……。
痛みからか、悔しさからか分からない涙を流しながら、俺の人生はそこで幕を下ろした。
*
「……さん」
誰かが呼ぶ声が聞こえる。……でもそんなことより布団が暖かい。さっきまであんなに寒かったからかな、この温かさが心地いい。
「起きて……」
なんで起きないといけないんだ。こんなに暖かいんだからまだこのままがいい。痛みもないし。
「兄さん起きて!」
ガバッと布団を誰かに剥がされ、眠たい目を擦りながら目を開けると。
「もう!今日は入学式なんだから早く起きないとダメでしょ!初日から遅刻しちゃうよ!」
プレイしていた乙女ゲームの主人公がいた。
「……へ?」
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